2016年4月27日、Amazon が電子書籍端末機Kindleの新製品Kindle Oasis販売を開始した。
初代Kindleが登場したのは2007年。それ以後、電子書籍市場を牽引してきたKindleシリーズであるが、今回はどのような進化を遂げたのか。そして、このKindle Oasisは、果たして「買い」なのか。今回は、そこのことについて書いてみたい。
まずはじめに、電子書籍端末機をめぐる現在の状況を確認してから、新製品Kindle Oasisの概要に触れたい。
(すぐにKindle Oasisについての説明を読みたい方は、目次から「2 Kindle OasisとKindle Voyageとの比較」をクリックして下さい)
電子書籍をめぐる歴史と現状
楽天が販売している電子書籍端末Kobo が苦戦をしているという報道が、2016年2月12日付けの「IT mediaニュース」において報じられた。
Koboに関連した減損損失として、78億円が計上されたというのである。その理由としては、「世界の電子書籍市場の立ち上がりが当初の想定よりも遅れ、それに伴う事業計画の遅れが要因」とアナウンスされたが、新しい技術というものは、多かれ少なかれ、そのような道を歩むことになる。
電子書籍に限らず、新しい技術を利用したフォーマットが定着するのには、長い時間がかかる。実際、電子書籍端末については、もう20年も前から発売されている。(まったく売れなかったのは言うまでもない)そのたびに「電子書籍元年」という言葉が踊ったが、いったい何回仕切り直しをしたのかわからないほどである。
では、なぜ電子書籍はなかなか普及しなかったのか。それは、使い勝手のいい端末を実用化するだけの技術力がなく、またそれ以上に一般読者のニーズが存在しなかったことに原因がある。要するに、理想先行の夢物語といった雰囲気だったのである。
だが、ここ数年の電子書籍をめぐる状況は、以前のそれとは決定的に異なるものとなっている。いまはKindleやKoboといった言葉を日常的に耳にするし、電車などの公共の場で電子書籍を読んでいるひとがいくらでもいるのである。
つまり、かつては最先端の流行を追うマニアにしか相手にされることがなかった電子書籍という媒体が、一般のニーズをつかむものとして、受け入れられてきているのだ。時代は確実にかわりつつあるのである。
今回発表されたKindle Oasisだが、これはあたかもKoboをめぐる楽天の苦戦を見こした上でのことかとも思えるほどのタイミングである。電子書籍端末機のシェア争いにおいて、Amazon が攻勢をかけてきた感すら抱くのである。
Kindle OasisとKindle Voyageとの比較
以下、新製品Kindle Oasisの具体的なスペックや、気になる細かい作りについて見てみたい。新機種となる本作Kindle Oasis注目する点はいくつもあるが、ここでは解りやすいように今回発売されるKindle Oasis Wi-Fi バッテリー内蔵レザーカバー付属 ブラック キャンペーン情報つきモデルをこれまでの最上位機種であるKindle Voyage Wi-Fi、キャンペーン情報つきモデル、電子書籍リーダーと比較をしながらご紹介していく。
Kindle Voyage本体の重さは131グラム
まず、気になるのはやはり本体の重量である。Kindle Oasisの気になる重さは131グラムである。これは、Kindle Voyage のグラムに比べて47グラムも軽くなっている。
大きさは14.3(縦)×12.2(横)×0.34~0.85(厚み)センチ
つぎに、本体サイズ全体を見てみよう。なおAmazonの公式データではミリ表示で説明されているが、センチで考えたほうが感覚的によりご理解いただけるかと思うので、本稿では単位をセンチに改めてご紹介したい。
Kindle Oasis本体は、縦14.3センチ、横は12.2センチとなっている。厚みはといえば、薄い部分は何と0.34センチ、もっとも厚い部分でも0.85センチとなっている。これはVoyageと比較すると、縦が1.9センチ短く、横は0.7センチほど大きくなっている。
要するに、Kindle VoyageとKindle Oasisを比較すると、Kindle Oasis はKindle Voyage に比べて30パーセントも薄く、20パーセントも軽いのである。これは、使い勝手を考えると大きな進化である。
ディスプレイは6インチ、目に優しいバックライト設計
また、肝心のディスプレイはというと、サイズは6インチ(15.24センチ)で、これまでの最上位機種であるKindle Voyageと同等の300 ppi高解像度ディスプレイが用いられている。これによって、文字がくっきりと浮かび上がり、ストレスなく読書を愉しむことが可能となるだろう。
また、電子端末を使用する際に気になるのが、目の疲れである。今回のKindle Oasisは、それにひとつの回答を与えている。
一般的なディスプレイがバックライトが画面の内側から利用者の方向へと光を発しているのに対して、端末の内部に設置されているライトが画面表面を照らし出す技術を利用する。LEDが現行製品よりも60パーセントも多く使われていると説明されている。
ページをめくるための「ボタン」が設置されている
また、今回の製品Kindle Oasisでその作りにおいて、もっとも特徴的なのが、本体にボタンが取り付けられたことである。
このボタンを押すことで、読書中にページをめくる機能となるのだ。もちろんいままでのように、画面をフリック操作することでページをめくることも可能であるが、ボタンを押すことでページがめくれるというのは、やはりストレスがなくなりいい。また、ボタンも親指の位置に設計されているようなので、操作もわずらわしくなく、快適に読書を愉しむことが出来る。
動きにあわせて、画面がスクロール
さらに、Kindle Oasis 本体を上下させた場合、それにあわせて自動的に画面が切り替わるというから、ストレスなく読書を愉しむことが可能となるだろう。
Kindleに限らず、読書をするのは通勤時間帯が主であるひとは多い。押し合いへし合いの満員電車の中で、アクロバットな姿勢で揺られながら本を読むことも多々あるが、本体の位置によって勝手に画面が切り替わるというのは、何ともいえず快適である。こればかりは、紙の本には出来ない芸当である。
まるで手帳カバーのようなバッテリー端末
もうひとつ特出すべき点は、バッテリーである。電子書籍端末に限らず、あらゆるモバイルメディアにおいて気になるのが、充電がどれだけもつかという点に尽きる。
どんなに快適な使い心地であったとしても、その分電源を消費し、すぐに電池切れというのであったら、まさに宝の持ち腐れとなってしまうからである。だが、Kindle Oasisは違う。今回、その充電の問題をも解決したのである。
その充電方式が、何ともいえずスタイリッシュである。何と、カバーの形式をとった電源なのである。カバーには磁石が12個ついていて、本体とぴったりくっつく仕様になっている。本体を包み込む豪華なつくりのカバー、一見すると、高級手帳を開いているかのような感じにもうつる。色はそれぞれ、ブラック・メルロー・ウォルナット(スウェード)の3色が用意されている。
バッテリーは数ヶ月稼動
もちろん、いいのはデザインばかりではなく、使い勝手も便利この上ない。カバーを閉じることでKindle Oasis本体の電源が落ちるというから手間もかからない。
さらに、カバーをつけた状態で充電をすると、Kindle Oasis 本体とカバーの両方に充電がなされる。それで数ヶ月も電池が持つというから、読書好きにはたまらないだろう。ちなみにカバーの重さは107グラムであるが、本体とあわせても238グラムにすぎないというから驚きである。
また気になるメモリ容量であるが、4GBメモリとなっていて、数千冊分の小説のストックが可能であると謳われている。
Kindle Oasisの価格は3万5980円から
さて、これまでKindle Oasisが持っているさまざまな魅力的なスペックを見てきたが、いざ購入するといったときには、もっとも気になるのは価格であるというのが消費者の本音であるだろう。これだけの高機能がつまったKindle Oasis、なかなかの値段になっている。
では、気になる値段を見てみよう。(価格はすべて消費税込み)
Kindle Oasis Wi-Fi バッテリー内蔵レザーカバー付属 ブラック キャンペーン情報つきモデル
こちらのキャンペーン情報付きWi-Fiモデルは、3万5980円。
Kindle Oasis Wi-Fi バッテリー内蔵レザーカバー付属 ブラック
キャンペーン情報なしWi-Fiモデルは、3万7980円。
Kindle Oasis Wi-Fi + 3G バッテリー内蔵レザーカバー付属 ブラック キャンペーン情報つきモデル
キャンペーン情報付きWi-Fi+無料3Gモデル、4万1190円。
Kindle Oasis Wi-Fi + 3G バッテリー内蔵レザーカバー付属 ブラック
キャンペーン情報なしWi-Fi+無料3Gモデルが、4万3190円。
もっとも安いモデルでも3万5980円であり、高いものはそれより7000円ほど高くつく。
「Kindle Oasis キャンペーン情報付きモデル」とは
ちなみに上記「キャンペーン情報付きモデル」について説明すると、キャンペーン情報とは、ロック画面に表示される広告のことである。つまり、「キャンペーン情報付きモデル」とは、要するにコマーシャル表示がなされる分だけ価格が2000円安くなる仕様なのである。
いろいろな最新情報を入手したいと思うのであれば、こちらを選ぶのことをおすすめする。だが反対に広告はなくてもかまわないのであれば、キャンペーン情報なしのモデルを購入すればいいだろう。
Kindle Oasisがおすすめである理由3つの理由
以上、Kindle OasisをKindle Voyagerと比較しながらその機能を説明してきた。まさに、驚きのスペックである。
Kindle Oasisがおすすめである理由 1 最先端技術は、新しい体験を与えてくれる
Kindle Oasisは、これまでの最上位モデルKindle Voyageよりも高い価格設定となっているが、その分進化していることがお分かりいただけただろう。
もっとも、高性能なのは理解できたが、値段がもう少し安ければ、というのが、本音ではないだろうか。もっとも、新しい技術を用いたビジネス初期における製品というのは、おおむねその価格は高くなってしまうのは否めないところである。
だが、最先端の技術を駆使した製品というものには、それだけの価値があることは確かだろう。なぜなら、その新しい技術を使って、わたしたちは時間を短縮したり、生活を豊かにすることが可能となるからだ。
Kindle Oasisがおすすめである理由 2 早めに入手することで、先行者優位がはたらく
もちろん、いずれは今回発売のKindle Oasisの機能と同等レベルや、あるいはさらなるハイスペックな機能をもった機種がより割安な価格で発売されることは間違いない。
Kindle Voyageが発売されたとき、わたしは「ああいつの間にか未来がやってきたんだ」と思ったものだった。だが、そのKindle Voyageをやすやすと乗り越えた製品が、このKindle Oasisである。科学技術とは、爆発的に成長するのである。
科学技術の領域は日進月歩である。それゆえすべての最新かつ高等な技術やスペックは、何年かすればすぐに陳腐化してしまう運命にある。
かつてのスーパーコンピュータが現在のスマートフォン端末の機能よりも劣り、またその価格面においては雲泥の差であることを、わたしたちは知っている。これが、資本主義におけるイノベーションである。科学技術と資本主義における価格設定とは、そのようなものなのだ。
だが、いずれは訪れるであろう「現行の最先端の機能が当たり前になって、価格も廉価になるその時」をただ指をくわえて待っているのは、賢明な判断とはいえない。なぜなら、この世界には先行者優位という揺るぎない競争原理があるからである。
例えば、スマートフォンが登場したときに、それをすぐに購入した人は、誰よりも早く、豊かさを享受し、新しい世界を垣間見たはずである。GPS機能を用いた道案内や、指一本でアクセスできる手軽といったものは、現在では「当たり前のこと」となっているが、当時は画期的な出来事だった。そのような最先端の技術をいち早く利用するか否かということになると、当然ながら早いほうがいい。
この世界でもっとも価値のある資源は時間である。お金は後で幾らでも稼ぐことが出来るが、時間ばかりはどうしようもない。
だが昨今のデジタル業界における新しい技術を用いた製品は、いずれそれが基本のフォーマットとして定着し、社会やビジネスシーンにおいて、インフラ同然となって広く使われるようになる傾向にある。
そのような時が訪れて、将来的に購入する可能性があるのであれば、今のうちから入手して、豊かな体験を一足先に楽しむということが極めて理性的な判断となってくる。
Kindle Oasisがおすすめである理由 3 自由に物を購入することが出来る社会に生きている利点を生かす
現在の日本社会は、消費者は自分の意思ひとつで、何でも購入、利用することが可能である。そうであるのだから、その特権を生かすべきである。
もしわたしたちの社会が身分社会であったら、上位階層しか購入できないとか、税金を少なく払っている人は購入してはいけないなどといった差別が起こりうるが、幸いわたしたちの社会は、幸いにしてそのような抑圧的な体制ではない。
ただお金を支払うだけで、最新の豊かさを享受することが出来、まだ見ぬ世界に触れることが出来るのである。それならば、少しでも早く最新技術を用いたほうがいいに決まっている。わたしたちを妨げる外部要因は、何もないのである。
わたしたちは、勝手に自分で自分を限定したり、裁いたりすることを無意識のうちにやりがちである。こんなことをするのは身分不相応ではないかとか、今の自分にはまだ早いといったようなことを、考えてしまうのである。これは、自信のなさが生み出す、何の根拠もない妄想である。
自分に与えられた能力を十分に開花するためにも、いかすことが出来るものは活用し、つかめるチャンスはつかみ、利用すべきものは利用すべきである。
Kindle Oasisはおすすめの新機種であり「買い」である
以上述べてきたことを踏まえると、Kindle Oasisは十分に「買い」ではないかと思うのだ。確かにこれまでの他のKindleシリーズと比較したとき、価格の上では高い。だが、それ以外の面での充実を考えると、十分にもとはとれるし、それ以上の価値を享受することができるだろう。
特に、わたしが今回の「Kindle Oasis」で注目したのは、先に解説したその大きさや重さといった、形そのものである。日本でなかなか電子書籍が一般化しないのは文庫や新書が充実しているからではないかとわたしは睨んでいるのだが、電子書籍を敬遠する理由として考えられる最大の理由は、端末の重さが挙げられる。
電車通勤が主である日本の就業事情を考えたとき、満員電車に揉まれながらその時間に手軽に読むことが出来るフォーマットとしての文庫や新書というのは、ニーズが大きいのである。
それを踏まえると、ボタンひとつで片手で操作することを想定した作りが、もっとも革命的だと思いたい。先程の例の続きになるが、電車での読書の最中に、つり革に掴まりながら読書をすることが出来る。満員電車の中で、両手をふさぎながら乗車するのはさすがに不安である。大きめのスマートフォンが敬遠される理由もここにある。
だが、今回の端末Kindle Oasisは、小さく、そして軽くなっている。コンパクトになったこともあり、より読書に没頭することが出来るのだ。ちなみにAmazon は、電子書籍端末を使っていることを忘れるくらい、本に没頭して貰うことを目指してKindle端末の開発を しているという。その思いをこめて開発されたのが、今回のKindle Oasisなのだろう。
日々充実していく、Kindleコンテンツの魅力
電子書籍市場は、今回の「Kindle Oasis」の登場によって、いよいよ電子書籍の「真の実用化」が現実的になってきた感じがする。
Kindleコンテンツも日々内容が充実しており、読者のニーズに十分こたえつつある。最新刊はもちろん、遠い昔に絶版になってしまった本がKindle メディアで復刊していることもまた、大きな魅力である。
一般書籍に比べて価格が安いことの利点はもちろん、さらにはKindle版を購入することで書籍の保管場所の問題が完全に解決する点もまた、電子書籍の魅力である。読書家にとって読んだ本の収納ほど困ることはない。わたしも家中が本で埋もれて暮らしているが、読みたい本は次々に登場する。だがKindle書籍を利用するようになって、この問題は完全に解決した。
Kindle Oasisは、読書を愛する者への、現状における完璧な回答となる。このブログではさまざまなジャンルのKindle本を取り上げ、紹介しているが、Kindle Oasisの登場で読書熱がアップし、そのペースがさらに上がりそうな気さえするのである。