衣食住という言葉があるように、住居は生きていくうえで、切っても切れないものである。
本書はその住居を取り扱う不動産屋さんの視点から、物件そのもの、さらには賃貸人をめぐるさまざまな出来事や裏側をオムニバス形式で描くコミックエッセイとなっている。
あなたの家の隣にゴミ屋敷や汚部屋があるかも?
ここ数年「ゴミ屋敷」「汚部屋」「片付けられない症候群」といった言葉を、よく耳にするようになった。要するに、ゴミだらけの空間で寝起きしているひとたちに関する話題である。
集合住宅を管理していると、どこかから異臭がするから何とかして欲しいという苦情が舞い込むことが多々という。そのような連絡をうけると、まずはじめにどの部屋が臭いの発生源なのかを探ることになるのだが、集合住宅には数多くの人が住んでいるので、どこの誰がゴミを捨てずにいるのかを突き止めるのは容易なことではない。また、ファミリータイプのマンションであるのならともかく、ワンルームをはじめとする単身者向け物件の場合は住人が外出中の場合はまったく部屋の中の様子を見ることが出来ないため、特定に極めて長い時間がかかることになる。
ゴミ屋敷や汚部屋にしてしまうきっかけは?
もっともそんなこんなをへて、やっと突き止めた「犯人」はといえば、何でこの人がといいような、意外なひとだったりすることが多々あるようだ。
本書には、ゴミを溜め込んでしまう人の心理が描かれていて、それが興味深い。そのきっかけとなるのが、ゴミの日に起きられなかったという単純な理由のようだ。それが何回も重なると、だんだんと意識が鈍ってくるのか、「わざわざ早く起きるのも面倒臭いから別にいいか、部屋はただ寝るだけの場所だし」と判断するようになってしまって、気がつけばゴミの山に囲まれていた、といったふうに事がすすんでいくのだという。
わたしもまた、忙しさのあまりゴミを出し忘れることがたまにあるのでよくわかるのだが、ばたばたとした朝は、ただゴミを出すというその時間すら確保するのが難しい時があるものだ。特にゴミ収集車が早くまわってくる地域であればなおさらである。単身住居の場合、他に出してくれる人がいないので、自分の行動ひとつにかかってくるのでリスクが高くなる。もし不動産経営をしているのであれば、このようなゴミの問題を避けるためには、ダストボックスを設置して24時間いつでも住人がゴミを捨てられるような環境は必須であるだろう。
物件選びのコツも記載
また本書には、不動産のプロの視点による具体的な物件選びについてのアドバイスも掲載されている。例えば本書の冒頭部において語られているのだが、一般的に思われている「いい物件」と実際のそれは異なることが語られている。特にコンビニが近くにある集合住宅は極めて魅力的にうつるが、一概にそうとも言えないという話は極めて興味深く読んだ。
では、どんな物件を選べばいいのか。それはまさに人それぞれ、かつその時々の物件状況にかかっているとしかいいようがない。だが、そもそもの前提として、物件選びの際には、「これだけは譲れない・あるいは場合によってこれは諦めても構わない」といったように、自分の中で条件に対して順位付けをしておくべき、というアドバイスが本書ではなされている。これをしておかないと、あれもこれもとこだわってしまうあまり、いつまでたっても決まらないという事態になってしまうのだ。条件をリスト化し、どこを妥協するのかを決めることを本書では提案しているが、これは実用的なやり方であると思う。
不動産業界は、もっとも大きなお金が動く業界であるので、そこは自分とはまったく係わり合いがない世界であるような感じがする。だが不動産業界とは、住居というわたしたちの生活の基盤そのものに関わるものであるがため、もっとも近い業界でもあるともいえるのだ。本書は生臭い面も多々含んでおり、さまざまな事例が本音で描かれている。
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