『平和憲法の深層』 古関彰一/著

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日本国憲法第9条については、近年、主に保守層の政治家や言論人から改正の論議があがっている。

彼らが主張するところには、日本国憲法は戦勝国であるアメリカによって押し付けられたものであるという。
俗に「押し付け憲法論」と呼ばれるものだ。
本書は、憲法制定過程を綿密に調べることによって、「押し付け」の実態がどのようなものであったのかを、解明するものである。

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そもそも、日本国憲法第9条の発案者は誰なのだろうか?
大きく分けて二つの説がある。
一つは、当時の首相であった幣原喜重郎によるという説。
もう一つは、マッカーサーと幣原の合作によるものであるとする説。
この二つが主流となっている見方である。
他には、昭和天皇の意向によるものだとする説もあるくらいだ。
だが、マッカーサーが単独の発案者だという説はほとんど無い。
本書は、大胆にもマッカーサー単独説を主張するものであるので、非常に興味深いものである。

また、本書の特色として「平和国家」という、現在では広く使われている言葉がいつできたのか、そしてそれが憲法とどのような関係にあるのかを検証している。
1946年2月に、GHQの憲法案を知ると、東大法学部の宮沢俊義らが、それに見合った憲法案を作り出した。
その知られざるGHQの憲法案と東大案との関係や、日本国憲法へ与えた影響について考究しているのは、非常に珍しい。
そのなかで、宮沢俊義に対する痛烈な批判がなされ、鈴木安蔵という民間の学者を取り上げている。

鈴木安蔵は、自由民権運動の研究者であり、早くから明治憲法の改正案を練っていたという。
それが、GHQ案に影響を与えているのではないかという考察を、著者は主張している。

また、「敗戦」を「終戦」に、「占領軍」を「進駐軍」と言い換えたのは、誰であったのかという論述を、江藤淳の研究を紐解いておこなっていて、非常に読みどころの多い一冊となっている。

日本国憲法第9条というと、保守派とリベラル派双方で、根本的に考えが違うので、「憲法9条は不利益だ」、あるいは「憲法9条は素晴らしいものだ」という結果ありきの本が多く、読者もすでに自分の中にある憲法観に沿った予定調和的なものを読みたがる傾向が強いと思う。

本書の著者は、護憲リベラル派の学者であるようだが、論の立て方や、研究の対象が独特で、良い意味で読者の期待を裏切ってくれるものだ。

平和憲法の深層〈電子書籍Kindle版もあります〉
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