『「タレント」の時代 世界で勝ち続ける企業の人材戦略論』 酒井崇男・著

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本書でいう「タレント」とは、創造的知識労働ができる人材のことである。
タレントの存在なしに、企業の成長、国家の繁栄はあり得ない。
タレントを生かす組織モデルを構築できていない会社では、タレントは能力を発揮できないままに終わってしまう。
なぜ、トヨタは成功しているのだろうか、なぜ、ソニーは低迷したのだろうか?
それは、タレントを生かす組織を構築できていたかどうかによるものである。

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これまで多くの人材論、組織論が語られてきたが、そこに欠落しているのは「知識と労働と利益」に関する部分である。
経済学でも経営学でも、人間の労働に関しては、19世紀頃の単純労働・肉体労働を前提としたままである。
例えば労働基準法は、戦後間もない頃に就業人口の多くを占めていた工場労働者を念頭に置いてつくられたものである。
産業構造が変わり、ホワイトカラーが増え、グローバル化が進んだ現在の状況においては、単純労働ではなく、創造的生産労働によって、企業に多くの利益がもたらされるのである。

著者は労働を大きく二つに分類している。
一つは、定型労働。もう一つは、非定型労働である。
定型労働とは、「処理の内容が既知の仕事」である。
例えば、ファーストフードのお店のスタッフなどは、マニュアル化された業務をこなすので、定型労働に該当する。
一方、非定型労働とは、「処理の内容が未知の仕事」のことだ。
トヨタ系工場で簡単な業務改善を推進する人たちは、非定型労働をおこなっていると言える。

労働内容の分類は、ホワイトカラー、ブルーカラーという二元論で語られることが多いが、本書はまったく別の視点を提供している。

例えば、会計士や税理士、臨床医などは定型労働者である。
会計士や税理士などの労働は、法律で定型制を義務づけられている。
これらの士業の世界では、創造性は法律違反になることもあるからだ。
これらの業務は今後、コンピュータ・人工知能の発展によって、職が奪われるという指摘もなされている。

会計士や臨床医というと知識労働者の典型であり、社会的地位も高いものとされるが、そうした価値観で、労働を捉えないのは、本書のオリジナリティが発揮されている部分だと思う。
結局、富の源泉となるのは知的生産活動をおこなう「タレント」と「タレントを生かす仕組み」にある。
単なる転写的労働・定型労働ではなく、創造的知識労働・非定型労働によって、企業は成長し、国家は繁栄するのである。

しかし、タレントを生かす仕組みをつくるのは容易ではない。
例えば、タレントAと上司Bが同じ職場で働いているとする。
タレントAの創造的な労働を、上司Bはまったく理解できない。
そもそも話が通じないので、コミュニケーションは成り立たないし、優秀な部下を評価することができないわけだ。
本書で紹介されている話で次のようなものがある。
・B級人材はC級人材を採用する。
・A級人材はA級人材と知り合いである。
優れた能力を持つA級人材は、相手にも優秀なものを求める。
しかし、A級人材よりも能力的に劣るB級人材は、自分よりも劣るC級人材を自分のまわりに配置することで、自分の立場を保とうとするのである。

本書は、まったく新しい視点から書かれた人材論・組織論として大きく評価されるべきものであると思う。今後の会社運営にあたっては、いかに優秀な人材=タレントを使いこなせるかが、とても重要なことではないだろうか。

「タレント」の時代 世界で勝ち続ける企業の人材戦略論〈電子書籍Kindle版もあります〉
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