最高の人生を歩きたい。これは、誰もが願うとことではある。だが、実際に自分はベストのそれを生きていると胸を張って言える人は、ほとんどいないのではないか。これは、なんとも悲しいことである。
著者・本田健は、長年の思索と自らの経験、そして多くの成功者の人生を見た結果、願望達成における、ある画期的な発想を得た。それをまとめたものが、本書である。本田鍵は、数多くの著作をものにしているが、本書はその中において、頭ひとつ抜いているものとなっている。
すでに存在している「望む未来」を引き寄せる?
本書の軸となるのは、「時間は、過去から現在、未来へと一方向へ流れていくものではないのではないか」という考えである。要するに、過去の積み上げの結果が現在であり、現在の経験が未来を作りあげるという一般的な認識は、間違いなのではないかと述べるのである。なんとも大胆な話である。
本田健は「未来というものは、無数の可能性として、すでに存在しているのではないか」という、大胆な仮説を披露する。要するに、いくつもの未来が存在していて、わたしたちは、なんらかのきっかけでそれらのうちのひとつを引き寄せて、「現実の未来」とするのではないか、というのである。つまり、それぞれの未来を無意識のうちに選択していると述べるのである。著者は無数の未来の中からそのひとつを選ぶことを「金魚すくい」にたとえる。そう、好きな未来の姿を、自分の意思で、選び取るのである。
あこがれている人のまねをしてみる
では、仮にそれが事実だったとした時、わたしたちはどのようにすれば、望む未来をすくいあげることが出来るのか。著者はとにかく自分がわくわくすることを想像してみようと述べる。そうすることで、自分にとっての最高の人生とは何かがはっきりと思い描けるというわけだ。
その際には、自分が理想とする人物のようになりたいと思うのがもっとも手っ取り早い。何故なら、憧れの人とは現実に自分が理想とする人生をこの世界で実際に作り上げてきた、格好の実例であるからだ。彫刻家が石の中から作品を作り出すように、わたしたちも憧れのあの人が行ったように、自分の理想とする姿を掘り起こしていけばいいのである。
シンクロニシティーと引き寄せの法則
もちろん、ただこんな未来を実現したいと思っているだけではいけない。理想の状態を思い定めて、それに向かって出来ることを少しずつでもいいからやっていくのである。
そうすると、いろいろな人からの思いがけない助けを得たり、さまざまなシンクロニシティーが重なって、理想の未来へと吸い寄せられていくと、著者は述べる。
このように書くと、なんだかひどく荒唐無稽なことが述べられているように思うが、実際、思いがけない偶然が重なって、ことがとんとん拍子にはこぶということは、ままあることである。著者は「ランデブー・ポイント」という言葉を用いてそれを説明しているが、シンクロニシティーを意識的に起こすようにすることで、望む未来を実現することが出来ると主張するのである。
理想の未来を引き寄せる生き方
過去の体験や考えから積み上げて未来を作り上げるという考え方は、過去の思いや感情に囚われたものになりがちである。また残念ながら、誰にとっても過去というものは、えてして苦いものである。
そうなると、そこから発想し、行動につながって形づくられていく未来は、どうしても安全牌を狙った、スケールの小さなものになりがちである。著者は過去に引きずられて歩く人生をムーンウォークのようだと表現するが、なんとも上手い表現であると思う。
どうせこの世を生きるのならば、最高の人生を歩きたいではないか。本書は、そのために必要な手段が書かれている。理想の自分になりたい、こんな夢を叶えたいと思うすべての人が読むべき本である。