浅田真央や羽生結弦のスケートをより楽しむためのポイントを総まとめ! 『プロのフィギュア観戦術』 鈴木 明子/著

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現在の日本には、浅田真央や羽生結弦のように、世界の頂点に立つフィギュアスケート選手が存在する。彼彼女らの活躍は、テレビ中継によってリアルタイムで観ることができ、その高いレベルのパフォーマンスが、わたしたち日本人をフィギュアスケートに夢中にさせる要因のひとつになっている。

だが、一般的な観戦者の視点からすると、彼らの演技を見たときに「きれい」とか「カッコいい」というくらいの感想しか出てこないのも事実である。本書は、フィギュアスケートに関するあれこれを丁寧に解説した本となっていて、そのような言語化される以前の感情を言葉にするツールを与えてくれる。

さて、本書は2014年に引退した元フィギュアスケート選手で、現在は解説者・振付師として活動している、鈴木明子さんが書いたものである。全編平易な文章で書かれており、専門用語もあまり出てこないので、フィギュアについてほとんど何も知らなくても、手軽に読める内容となっている。

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『プロのフィギュア観戦術』各章ごとの内容要約

では、細かい内容について触れる前に、まず本書の概要を整理してみよう。

第1章は、著者自身の選手時代を振り返りながら、フィギュアの世界について読者をいざなう導入部となっている。

第2章は、著者自身が選手として参加したソチオリンピックの思い出や、オリンピックに対しての思いが綴られている。

第3章は、フィギュアスケートの大会が一年を通じてどのように行なわれるか、そして選手たちは、どんな準備をしているのかについて書かれている。

第4章は、選手の成長過程を、安藤美姫や浅田真央らの幼少時代のエピソードを交えて描いている。

第5章は、現役選手を各々紹介している。

第6章は、今後のフィギュアスケートについて、著者の抱負も交えて書かれている。

ちなみに各章のあいだには、世界のフィギュア選手の紹介がされており、こちらも読みどころとなっている。さらにコラムとして、フィギュアスケートのプログラムの構成や採点の方法、さらにはルールといった競技上のことについても、簡潔にまとめられている。

フィギュアスケートがもつ二面性とその魅力

さて、フィギュアスケートにはその競技の性質上、二つの面があるという。スポーツとしての面と、芸術としての面である。したがって、フィギュアスケートの選手とはアスリートでもあり、かつアーティストでもあるのだ。

そもそも、フィギュアスケートは、オリンピック競技でもあるにもかかわらず、スピードや強さを競うものではない。これは確かに言われてみればそのとおりだと頷かざるを得ない指摘である。

それゆえ、フィギュアスケートを見る者は、スポーツというより、どちらかというと芸術を鑑賞するような感覚でフィギュアスケートを楽しむべきなのだろう。絵を見たり、あるいは映画を鑑賞するような感覚で、わたしたちは生身の体が躍動するこの上ない芸術を、目に焼き付けさえすればいいのである。

その上で、技術的な面や競技の運営についての知識、さらには選手たちについての個々の情報といったものを追っていけば、より深くフィギュアスケートを楽しむことができるだろう。本書は、そういった願いを叶えてくれるものだ。

浅田真央も羽生結弦も、靴にこだわる理由とは

本稿を結ぶにあたり、わたしが本書のなかで興味を持ったところを少し書いておこう。
それは、フィギュア選手の靴に対するこだわりである。彼らの靴は一足だけであり、スペアは用意していないのだというのである。

一般的なスポーツにおいては、試合に使う道具をひとつしか持っていないということは、考えにくい。野球選手だったら何本もバットを持っているし、サッカー選手だったら何足もスパイクを持っているものである。傍から見たら、靴が壊れてしまうことも想定して予備を用意しておけば良いと考えがちだが、そうはいかないようだ。その理由については、是非本書の中から見つけてほしい。

フィギュアスケートの名選手の多くが名古屋出身

またこのほかにも、なぜ名古屋からは世代を越えて多くの名選手が輩出されるのかという話も気になった。たしかにそう言われてみると、伊藤みどりに始まり、近年では安藤美姫と浅田真央、さらには本書の著者もまた名古屋出身である。

フィギュアスケートに限らず、あらゆる物事はちょっとした豆知識があると、さらに深く楽しめるものである。本書は、フィギュアスケートに興味のある方全員に、ぜひとも読んでほしい一冊となっている。

プロのフィギュア観戦術 選手たちの心理戦から演技の舞台裏まで PHP新書
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