『文系学部解体』 室井尚/著

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2015年6月8日、文部科学省より全国の大学に対して通達があった。
「国立大学法人等の組織及び業務全般の見直しについて」というもので、その中で目を引いたのが「教員養成系や人文社会科学系の学部・大学院については、組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組みよう努めること」、つまり文系学部・学科の縮小や廃止を「要請」している点だった。

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この通達は、人文系の学問を軽視したものであり、新自由主義的な競争原理を、教育の場にも導入した結果として捉えることができる。
人文系の学問はお金にならない、採算が合わないから削ってしまおう、という発想である。
このような流れは、今に始まったことではない。

本書では、第2章において、近年の大学改革の歴史を振り返っているので、以下、参考にしてみたい。

1991年に施行された「大学設置基準の大綱化」というのに、現在の潮流の原型を見ることができる。「大学設置基準の大綱化」を詳述するのは煩雑になるので避けるが、一言でいえば、大学の自由化である。

これによって、大学の設置基準は大幅に緩和され、新しい大学の申請や、すでにある学部の組織変更や改組も容易になったのである。
少子化が進行しつつあった1990年代に、大学が増設され、新学部の設置が相次いだのは、これに関係しているのである。

こうした規制緩和は、1990年代を通じて推進され、小泉政権において、一層本格化することになる。

小泉政権によって、進められた大学の構造改革は、当時の文部科学大臣の名を冠して、遠山プランと呼ばれる。
遠山プランは以下の三つから成り立っている。
1、国立大学の再編統合を大胆に進める
2、国立大学に民間的発想の経営手法を導入する。
3、大学に第三者評価による競争原理を導入する。

こうした流れで国立大学の「法人化」がおこなわれることになった。
このような歴史を紐解いていくと、今取りざたされている「教育改革」というものの実態が鮮明になると思う。

本書は、文系学部のみならず、現在、日本の大学が置かれている危機的な状況を、表層的な理解に留まることなく、本質を突いているものとして、非常に価値のあるものだ。

文系学部解体 (角川新書)
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