『勝手に選別される世界 ネットの「評判」がリアルを支配するとき、あなたの人生はどう変わるのか』マイケル・ファーティック デビッド・トンプソン/著 中里京子/訳

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あらゆる個人データは集積化され、コンピュータの判断によって、人は選別されることになる。

そんな未来を予見した書『勝手に選別される社会』を紹介してみたい。

今を生きる私たちにとって、FACEBOOKは、欠かせないコミュニケーションツールとなっている。
だが、知らず知らずのうちに、自分の情報を不特定多数の人に漏らしてしまっていることがある。
「今日は有名フレンチでディナーを食べた」、「今日は同級生の結婚式に出た」、「今日は職場でトラブルがあった」、「今日は自宅付近で工事をしていて、うるさい」
こんな情報が積もり積もっていくと、ある程度、人物像を絞り込むことができる。
家族構成、学歴、職業、出身地、居住地、交友関係、恋人の有無、趣味、思想信条…。
赤の他人であっても、FACEBOOKを丹念に読み込んでいけば、こうした情報を、ある程度知ることができる。

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実際、FACEBOOKは個人情報の宝庫であるとも言える。
実際に、企業の採用担当者が、採用希望者のFACEBOOKを、判断材料にしている事がある。

自分の情報が、外部に漏れるのが嫌ならば、不都合と思われる過去の投稿を削除するか、非公開設定にして、FACEBOOKをやれば良い。

現段階では、それで対応できるだろう。
しかし、過去の投稿を削除しようが、非公開設定にしようが、アカウント削除しようが、一度ウェブ上にあげられた情報は完全には消えない。

こうしたものは、すべて永遠に保管されるのである。
これは、俗に「ビッグデータ」と言われるものだ。

デジタル・テクノロジーの急激な進化により、ありとあらゆるデータは大容量であっても、永遠に保管することが可能になった。
企業にとっては、一つのデータを削除するよりも、すべてのデータを永遠に保管するほうが大いにリーズナブルなのである。

そして、こうしたデータを分析し、評価するのは人間ではなく、コンピュータである。
「ビッグ・アナリシス」と呼ばれるものが、それだ。
「ビッグ・アナリシス」とは、集積された膨大なデータから個人に関する予測を抽出して、それを行動に変えるシステムのことである。
例えば、ローンの申し込みが却下されたり、非公表の採用試験に呼ばれたり、玄関前まで来た恋人の気を変えさせたり、といった具体的な行動がコンピュータによって導かれるのだ。

分かりやすく、説明してみよう。
FACEBOOKに、うっかり書き込んだ愚痴や暴言、差別的主張はもちろん、ネット通販で一週間前に何を買ったか、ネットサーフィンで昨日何を調べたか、友人に今朝どんなメールを送ったか、こうした極めてプライベートなことまで、ビッグデータには保管されている。

そして、こういったあらゆる個人的な情報が、「評判(レピュテーション)」を形成することになるのは、想像がつくと思う。

例えば、FACEBOOKに、「大事な会議に遅刻したので、上司がカンカン!」と書いた人がいれば、「時間にルーズな人」という印象を私たちは受けるだろう。
「食事しに行ったら、注文した料理がなかなか来ないので、店員に怒鳴ってやった!」と書いた人がいれば、「怒りっぽい人」という印象を私たちは受けるだろう。
このように私たちの受ける印象を「評価」という形で、コンピュータが代行するわけである。

例えば、職場の同僚の愚痴が書かれていれば、「協調性のない人」という評価を与えられる。
過去の武勇伝が書かれていれば、「モラルのない人」という評価を与えられる。
ネットショッピングで、ダイエット商品を注文すれば、「肥っている人」という評価を与えられる。
難解な哲学書を注文すれば、「知的な人」という評価を与えられる。

このような「評判(レピュテーション)」が集積されると、コンピュータによって、あなたの人物像が作り上げられていくのだ。
そして、あなたの評判はどこでも、いつでも、全世界で入手できるようになる。
これは、ビッグデータのさらに先を行く動きであり、これを「レピュテーション経済」と著者は呼ぶ。

「レピュテーション経済」が行き渡った社会では、検索エンジンを使ってウェブで情報を調べるように、みんな、「レピュテーション・エンジン」を使い、あなたのオンラインとオフラインの活動やつながりの足跡を調べられるようになる。
グーグルの検索結果に表示されない物事でさえ――たとえば、同僚に送ったセクハラまがいのメール、クレジットカードの支払い不履行、返済能力を超えて借りてしまった借金――レピュテーション・エンジンを使えば簡単に判明し、汚点としてデジタル記録上に永遠に残ってしまうのだ。

あらゆる情報は、集められ、評価され、得点をつけられ、恒久的に保存される。オンラインゲームのように一見関連がなさそうに見えるデータソースでさえ、あなたのレピュテーション・プロフィールに統合される。

そして、進学、就職、転職、結婚、ローンの審査などなど、人生のあらゆる局面で、コンピュータの評価によって、あなたは進学ができなかったり、就職ができなかったり、結婚を断られることになる。

そして、これらすべての元になるのが、ありとあらゆる種類の、複雑な方法で新たにデジタル化、ネットワーク化された、自分自身の評判なのである。

以上、「レピュテーション経済」の説明をしてきたが、これはもう既に始まりつつあることなのだ。
あらゆる個人情報をデータ分析するコンピュータが、すでに多くの企業で取り入れられている実例が、本書によって明らかにされている。

評判が貨幣や権力より重要になりつつある世界で、どうしたら「評判上手」になれるだろうか?

それが本書の目的である。

著者によれば、「レピュテーション経済」の到来は、多くの人にとってビジネスチャンスにもなるという。
コンピュータを逆手にとって、成功を収めるにはどうすれば良いかといったことが、本書の後半では書かれている。
そういった意味で、本書は「ビジネス書」らしいと言えるだろう。
また、個人情報の防衛策を学ぶ上でも本書は有用な情報を与えてくれる。
例えば、友人と連絡をとるときは、Gメールではなくて、タイガー・テクストやテレグラムで通信する。
愚痴をFACEBOOKに書き散らかすのはやめて、電話で誰かに話す。
こういった初歩的なことから始めてみると良い。

デジタル・テクノロジーの進化によって、私たちの未来がどんなものになるか、そういった事に興味がある人なら、面白く読めるはずだ。

勝手に選別される世界〈電子書籍Kindle版もあります〉
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