リストラを防止するための対応のまとめ 『人事評価の裏ルール』 溝上 憲文/著

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 0


リストラという言葉は、本来はリストラクチャリング=再構築であるが、日本でいうところのリストラは、あるときから「首切り・社員調整」を意味する言葉になった。

さて、そのリストラであるが、現在ではバブル崩壊後の1990年代にあちこちの企業で行われた賃金を浮かせるための早期退職募集とは異なり、景気の動向に関係なくなされているという。これは前述したところの本来の意味である組織の再構築を狙った「構造改革型のリストラ」であり、企業の業績とはまったく関係なく、常態化しているのだ。

スポンサーリンク

本当の意味でのリストラが始まった

では、何故今日、構造改革型のリストラが行われるのか。それは現在のビジネスシーンがまさに大きな転換ポイントに差し掛かっているからに他ならない。具体的には、ますます進む経済のグローバル化による無数のライバル企業の出現や、少子高齢化によるマーケットの縮小など、企業にとってこれまで当たり前だったある程度計算の立つビジネスモデルが、足元から崩れ去ってきているのである。

要はこれまでのやり方では、いつまでも利益を確保し続ける見通しが立ちづらくなってきているのだ。そうなると、未来に向けてより効率的な組織を構築していく必要性が出てくる。環境に相応しなければ、組織は滅びてしまうのだ。そのために、自ら構造改革を、というわけである。

安いと不満があっても、会社に所属していなければ給料は貰えない

以上踏まえると、すべての給与所得者がまず持つべき感覚は、自分がいつリストラされてもおかしくないのだという事を認識しておくべきことであるだろう。給与所得者は、雇ってくれる会社があってこそサラリーを貰って暮らせる存在である。それゆえ、会社からリストラされてしまったら元も子もなくなってしまう。人事評価を踏まえてリストラを避けるというのは、まさにわが身と家族を守ることを意味するのだ。本書は、自らがリストラ要員にカウントされることを避けるための方法を説明した、実に有益な本である。

人事評価の評価基準項目とは

著者は、会社がリストラ対象となる人を選別するために、表の人事評価とは別に、裏のルールが存在することを指摘している。これについては第1章で触れられているのだが、これを読むと「人事評価の裏ルール」ともいえるものの存在が見え隠れしてくるのである。人事部長100人が真っ先にリストラしたい社員の特徴を挙げているのだが、こういう観点から社員を見ているのかと、思わずうなってしまうこと請けあいである。

では、自分がリストラ対象とならない為にはどうしたら良いのだろうか?本書は、「世代別のリストラ基準」、「性格で切られる社員の基準」、「職種別のリストラ基準」といったように、リストラ要員となる社員の特徴を簡潔にまとめている。まずはこれを見て、自分に当てはまるところがないかをチェックしてみることをおすすめする。もし当てはまる部分があれば、改善していくのが望ましい。また本書には、リストラされないための秘訣も書かれていて、こちらを読むと大いに参考になる。

社会人の遅刻は評価を落とし、連絡の有無や頻度に関わらずクビの理由となってしまう

せっかくなので、その中から一つ具体例を紹介してみたい。著者は、「絶対に遅刻してはいけない」ということを強調している。何故なら、会社はリストラをする際に遅刻や欠勤などの勤怠記録を理由として、退職を迫るというのだ。勤怠記録は“客観性を装う”のに一役買い、社員を辞めさせるための有効なツールとなるのである。

また仮に、リストラされた社員から不当解雇だと訴えられた場合、企業はこの勤怠記録を証拠として持ち出して裁判に臨むのだという。解雇に関する裁判では「解雇に相当する客観的かつ合理的な理由が存在するか」という点が最大の争点となるが、もし仮に解雇された者に遅刻が多いようであれば、それが会社側の主張の根拠となってしまうのはいうまでもない。そうなると本当に不当解雇だとしても、厄介な事態を招くわけである。

本書には、このほかにもリストラされないための方策が多く盛り込まれていて、大変実用的なものになっている。備えあれば憂いなし。万が一に備えて、ぜひ一読をおすすめする。

人事評価の裏ルール
人事評価の裏ルール

おすすめ記事

Kindle Oasisおすすめレビュー。高いが「買い」である3つの理由

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする