企業広告戦略をまとめた良書 『ブームをつくる 人がみずから動く仕組み』 殿村 美樹/著

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本書の著者・殿村美樹は、「今年の漢字」、「ひこにゃん」、「佐世保バター」、「うどん県」などのPRの仕掛け人である。そのような広告・マーケティングのまさにプロと言える著者が、広告手法についてその確信、さらには本音を語る、広告・マーケティングについての本である。

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戦後日本における企業広告戦略の変化

これまで、広告業界における広告戦略は、きわめてわかりやすいトップダウン構造だった。上流から下流へ水が流れるかのように、情報は広がっていくという核心の元になされていたのである。要するに、新聞やテレビや雑誌などに広告を載せれば、必ず反響があり、ブームを作り出すことができた、というわけである。

これは、実際に過去のさまざまなブームを思い出してみると良くわかる。高度経済成長期から2000年頃まで、「ダッコちゃん」、「フラフープ」、「たまごっち」など、多くのブームが到来しては去っていったが、これらはみなメディア戦略の賜物であった。

しかし、ライフスタイルが多様化した現在、こうしたかつてのようなPR・広告手法ばかりにとらわれていては、大きなブームは起こりにくくなってきている。なぜなら、ネットが広く浸透して以来、新聞やテレビ・雑誌などといったマスメディアの影響力は、かつてと比較してはるかに小さくなったからである。

企業広告におけるスマートフォンの位置づけ

思い返せば、私が小学生の頃などは、昨日の夜にテレビでやっていたことを話している子どもたちが多かったものだ。しかし、今はネットにどっぷりとつかっている生活を送っている人が非常に多い。特にスマートフォンの登場によって、まさに四六時中、起きた直後から眠りに落ちる寸前まで、自らの欲する情報の収集が可能となったことが、わたしたちの情報との接し方に大きな変化をもたらした。

スマートフォンを主体として情報を収集している人たちは、あまりテレビも見ることもなく、また新聞や雑誌も読まないので、いくらテレビで凝りに凝ったCMを四六時中流したり新聞にインパクトのある見開きの広告を出しても、そもそも届かないがために反応しない。つまり、従来の広告手法は、ネット中心で暮らしている人には通用しないのだ。

かつての企業広告戦略は「北風」のやり方

では、どうすれば良いのだろうか?著者はイソップ物語の「北風と太陽」を例にあげて、PR手法の新旧の違いを対比させつつ、これからの企業がとりうるべき対策を解説していく。そう、ご想像のとおり、高度経済成長期のようなマスメディアが影響力をもっていた時代の宣伝戦略を「北風」と喩え、そのやり方は間違っていますよと、訴えるのである。要するに、かつての北風的な大手メディアを用いた広告戦略は「今はこれが流行っている、いや、これから流行るんだ、だから買え!」といったような、押し付けがましさや強制力をもったPR手法だったというのである。

イソップ物語を思い出せば解るように、北風は結局負けてしまう。そこで必要となるのが、「太陽」の戦略である。著者はそのように話を運んで、個人を主体としたソーシャルメディアを用いてひろくPRをしてく手法について述べる。

これからのPR戦略は「マイブーム」を集めること

著者は、今日におけるムーブメントとは、「マイブーム」が集まったものとしてとらえている。従来の広告手法のように、メディアを通じて一方的に「○○が流行っています」と宣伝するのではなく、「いま私、○○にはまっているんです」「いま、○○がマイブームなんです」といったように、個人の動きを作り出すことで結果的に大きなうねりを作り出し、新商品をPRにつなげていくことを提案する。いわば、商品やサービスの受け手である個人に宣伝してもらうわけだ。

実際、このようなことは、ツイッターやFACEBOOKといったソーシャルメディアにおいて、毎日目にすることである。あるサービスや製品を体験・消費した人が、それぞれのSNSを通じて思いをこめた情報を拡散すれば、ものすごい勢いで情報は広がっていくのである。

本書は広告に携わる第一人者が書いた本というだけあって、その内容はきわめて説得力がある。本書は商品の広報に関わる人のすべてに、大きな知見を与えるものであると思う。

ブームをつくる 人がみずから動く仕組み (集英社新書)
ブームをつくる 人がみずから動く仕組み (集英社新書)

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