『2020年マンション大崩壊』 牧野知弘/著

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10万円。
バブル期に建設された、新潟のとあるリゾートマンション物件につけられた現在の値段である。
資産価値は購入価格の100分の1以下になった。

これは、バブルという狂乱の時代が生み出した遺物だ、と多くの人は言うだろう。
失われた20年を経て、不動産価格は大幅に下落したのである。

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現在、マンションを買う人たちは、バブルの頃の人たちとは違って、浮き足だっていないし、賢明で、理性的だと自己認識しているはずだ。

マンションを買ったところで、値上がりなんて期待していない。
地方の物件は危ないけど、首都圏の物件ならば大丈夫。
こうした事を考えているのは、現代人の共通了解だと思う。

しかし、著者はこう明言する。
首都圏のマンションの将来における資産価値は、冒頭で取り上げた新潟のリゾートマンションと同じになるだろう。

そういえば、かつては常識だったことが、非常識になってきている。
住居のことを考える時には、まずどんな人たちが住むのか、というのを考えてみると良い。
お父さんが片道1時間半かけて都心の会社に通勤し、お母さんは専業主婦で、子どもは二人、というのが以前の一般的な家庭像だった。
家族それぞれの居住空間を確保するため、お父さんは通勤時間と引き換えに、郊外に住居を構えたものだった。

これは、現在の家庭像とは大きく異なっている。現在、結婚しない人は非常に多い。
結婚しなければ、広い住環境なんて必要ない。
わざわざ郊外に住まないで、会社に近い賃貸マンションに住むほうが合理的だ。
結婚していても、夫婦共働きで、子どもは保育所に預ける、これが現在の家庭像である。
大きく社会が変わった今、住宅をめぐる状況も同様に変わってきているのである。

現在、首都圏の個人住宅の空室率は10%以上である。特にワンルームマンションの空室率は軒並み高い。
ワンルームマンションといえば、かつて親元から離れた若者の生活空間だった。しかし、現在の若者は経済的に親元を離れられない者が多い。
だから、以前のようにワンルームマンションは埋まらないのだ。

ワンルームに限らず、マンションには多くの問題点がある。
まず、建て替えはほぼ不可能という事実である。
マンションというのは、建て替えを検討する頃になると、購入者の多くは高齢者になっている。
今後、年金支給額は減額されてゆくだろうから、今の現役世代は、高齢者になった時、貧しい暮らしをしているのは明らかだ。
もちろん、建て替えには資金が必要だから、建て替えなど土台無理な話である。
だいたい、共同住宅というのは、全区分所有者の中に一人でも異を唱える者がいるだけで、なかなか進まなくなるものだ。

それから、古くなったマンションには資産価値がほとんど無いという事実。
マンションの値段は、大部分が建物の値段である。
建物の価値は、年を経るごとに低下してゆく。20年もすれば市場的な価値は無くなる。
そうなると、土地の保有分だけが資産価値となる。
マンションの場合には、それぞれの専有面積に応じて、土地の所有割合が決められているが、同じ価格の一戸建てに比べると、土地の所有面積は非常に少ない。
特に、容積率の高い高層マンションの場合には、区分所有者の土地所有面積など微々たるものである。
そうなると、資産価値は相当低いものになる。
将来、10万円という値段がつけられることも充分考えられるのだ。

少子化、高齢化、建築技術向上、供給過剰…。
どれもこれも、マンションにとって、ろくな話ではない。
本書は、マンションが抱える問題点を、これでもかというくらい指摘している。

住居とは、おそらく人が一生のうちで買うもので、最も高いものである。
だからこそ、きちんとした知識を得ることが必要である。
大きく日本が変わっていくなかで、知っておくべき多くのことを、本書を読んで学んでおきたいものだ。

2020年マンション大崩壊〈電子書籍Kindle版もあります〉
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