『北朝鮮・絶対秘密文書』米村耕一/著

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謎めいたタイトルの本である。
著者は、独自のルートで「絶対秘密文書」を手に入れた。
さて、著者が入手した「絶対秘密文書」とは、そもそも何かというと、「北朝鮮の検察機関が捜査記録などをまとめたもの」のことである。
センセーショナルなタイトルから、「クーデター計画書」か何かだと思われた方も多いと思うが、著者が入手した資料は、北朝鮮という国家が崩壊へと突き進んでいることを示す一次資料なのであった。

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では、なぜ犯罪記録と国家の崩壊が結びつくのかということを説明してみたい。
そもそも犯罪とは、その社会の規範を犯すことであり、逆に言えば、国家権力が何を守ろうとしているのかを示すものだ。

実際に北朝鮮が対外的に犯罪者の存在を示すことは滅多にない。
つまり、著者が入手した「絶対秘密文書」は、北朝鮮では稀有な「国家が恥部と考えているものを国家公認で治安機関が作成した文書」であり、それは厚いベールで覆われた閉鎖国家の内情を知るためには、実に貴重な資料となるのである。

文書に記された具体的な犯罪事例としては、
・金鉱山のヤミ採掘
・放射性物質の密輸出
・世界遺産地区での文化財窃盗
などである。

これらの犯罪が示しているものは、軍人や公務員のモラルの崩壊に他ならない。

北朝鮮といえば、最高指導者や国家に対する国民の高い忠誠心や畏怖の念で成り立っているはずだった。
警察機関、治安機関は強大なネットワークを張り巡らせていて、完璧に情報統制がなされていて、完全な相互監視社会であり、国民はすっかり洗脳されている。そんな印象を、多くの人は持っていると思う。

だが、こうした見方は間違っている。
国民の心は、確実に変わってきている。
何故なら、ソ連崩壊後、北朝鮮は経済的に追い詰められたからである。

《1990年前後までは曲がりなりにも国家が食糧、生活必需品を配給・供給してきたが、90年代に入って経済難から配給制度が首都平壌などごく一部を除いて機能不全に陥り、代わりにヤミ市場が物資の流通を担う主役として登場するようになった。こうした変化の結果、軍人や公務員たちも何らかの副収入なしには生活が困難になっているのだ。》このように著者は述べ、北朝鮮のおかれている現状を説明する。

さらに、中国の存在が大きく関与している。
急速な経済成長を続ける中国は、北朝鮮の人々から見れば、お金がうなっている理想郷である。
北朝鮮国内では、需要がなくて大したお金にならない物品でも、中国国境まで持ち込んで、密輸業者に引き渡せば、それが大金に変わるのである。

本書で紹介されている犯罪の事例は、軍人や公務員をも含んだ広範囲な犯罪ネットワークが形成されていることを示しているものと言える。

2014年5月13日、平壌の中心部において、建設中の23階建のマンションが倒壊する事故が起きた。
何故、高層マンションは倒壊したのだろうか?

その理由は本書の中から見つけてもらいたい。
この事故からも、北朝鮮の国民の心が変わり始めていることを探ることができると思う。
本書は、北朝鮮の内実を知るのには恰好の書であり、かつ読み物としても面白い体裁にまとまっている好著である。

北朝鮮・絶対秘密文書: 体制を脅かす「悪党」たち〈電子書籍Kindle版もあります〉
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