21世紀の超大国インドを知るための本 『インドと日本は最強コンビ』 サンジーヴ・スィンハ/著

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著者は、日本で働くインド人ビジネスマンである。
多くの日本人は、インドというと何を思い浮かべるだろうか?
最近では、インドで70歳を過ぎた女性が出産というニュースが話題になったが、多くの日本人にとって、真っ先に思い浮かぶものは、おそらくカレーだろう。インドといえばカレー、カレーといえばインドである。

あるいはヨガ。格闘ゲーム「ストリートファイター」シリーズのダルシムなどは、まさにこの印象が具現化したものに他ならない。
また、インド人は数学に強く、IT関係が得意というイメージを持っている方もいるだろう。

本書は、そんなインドに対する一面的なイメージを刷新し、インドについての理解を深めることができる本である。

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ヒンドゥー教と「不浄の左手」での食事

本書で気に入った箇所をいくつか紹介していこう。まずは、インドの宗教であるヒンドゥー教についてである。

著者の見方では、日本の神道と似通った部分があるという。
ヒンドゥー教は、厳密な宗教というよりかは、自然や生活に根ざした哲学のようなものといったほうが、正確である。
教義も厳格ではなく、例えば「左手は不浄の手」といって、食事の時は右手だけを使って食べる、と思っている人は多いと思うが、それは誤解で、実際には食事のときに左手を使うこともあるという。

インド人は二桁の暗算が出来る!の真相

また、インド人は数学が得意で二桁のかけ算ができる、という話があるが、これも誤解に基づくものである。

確かに、二桁の九九を学校で教えるのだが、どこまで覚えるかというのは生徒によって、異なるものなのだ。
日本人のように一桁の九九しかできない者も多い。

だが、バラモン教の聖典にある「ヴェーダ数学」という計算法を習得すれば、簡単に二桁の暗算ができるようになるというから、すごい。

また、インド人はスポーツが苦手であるという。
確かに人口は多いはずなのに、オリンピックでは目立たない国である。
町にはスポーツ施設はほとんどなく、著者は日本に来て、町のいたるところにスポーツ施設があるのを知って驚いたという。

インド人がITに強い理由

さらに、最近のインドに対するイメージとして多く抱かれるのが、インド人はITに強いというものである。これに対して、著者はインドの歴史的・社会的理由が背景にあるという。

インドの秀才たちは、一般的にインド工科大に進む。インド工科大はインドのなかでは、東大法学部とか、ハーバード・ビジネススクールといったものに相当する。要するに、最高ランクのインテリたちは、理系に進学するのである。

理科系の学校に秀才たちが集まるのには理由がある。
それは、インドには門閥制度=カースト制度が残っており、政界、財界、官界で成功するには、それなりの家柄に生まれないと難しいからである。

理科系に進んで、研究者やエンジニアになるくらいしか、下位カーストの出身者たちが身を立てるチャンスがないのだ。
こういった社会的な背景によって、インドは理工系方面、IT方面に強い国となったのである。

インド人を唸らせたCOCO壱カレー

本書はインドについての知識を得ることが出来るだけでなく、異文化理解の本として面白く読める。

日本人は自分たちのパーソナリティーについて、決断力がない、リーダーシップにかける、嫉妬深い、人の目を気にする、政治家が低レベルなどといったようなネガティブな面ばかりを強調しがちであるが、本書を読むと、こうした思いが一面的な見方であることに気づくだろう。日本人からすれば、当たり前のことが日本人の美徳でもあるのだ。(政治家のレベルが恐ろしく低いのは美徳でもなんでもないのは言うまでもないが)

ちなみに著者は、COCO壱のカレーが大好きだという。
カレーの本場であるインド人が、日本のカレーが好きなのは、興味深い事実である。
こういったところに日本の強みがあるのかもしれない。

これまで多くの異文化理解の本が書かれてきたが、インド人のエリートビジネスマンが書いたものは珍しく、本書はその意味でも貴重な一冊となっている。

インドと日本は最強コンビ〈電子書籍Kindle版もあります〉
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