『マーケティングの嘘 団塊シニアと子育てママの真実』 辻中俊樹・櫻井光行/著

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本書は、従来のマーケティング手法である定量調査の限界を示し、一人の消費者=生活者を丸々理解する生活日記調査の手法で、その限界を打破することができる、と説いている。

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定量調査とはどういったものなのかを、まず説明しておきたい。
数百人から数千人程度にアンケートを実施し、回答を集計し分析する、というものである。
一見、もっともらしいマーケティング手法であると思うが、著者によれば、このような多くのサンプルを対象にアンケートをとるよりも、たった一つのサンプルを徹底的に追ったほうが、有効なマーケティングができるという。
これが、著者の推奨する生活日記調査の手法である。

なぜ、定量調査がダメなのかと言うと、いろいろと理由があるのだが、ここでは、その内の一つをあげてみよう。
それは、回答が不正確だ、というものである。
例えば、食品会社が新商品開発のためのアンケートを行なう場合を考えてみたい。
「あなたは健康に気を使っているほうですか?」という質問をして、それについて、「とても気を使っている」から「まったく気を使っていない」までの五段階の選択肢を用意して、回答してもらう。

そして、「健康に気を使っている」と答えた人たちをターゲットにして、新商品の開発を試みることにしよう。

しかし、一口に「健康に気を使っている」と言っても、その度合いは、答える人の主観によってかなり異なってくるはずだ。

「有機野菜のみを食べ、塩分は控えめにして、脂肪分は少なくとる」といった人と、「外食ばかりだけど、毎朝トマトジュースを飲んでいる」という人を、同列に考えて、これだけ異なる特性を持つ人を、同じターゲットとして扱ってしまうこともあるのである。

確かに、これだったら一人の消費者=生活者を丹念に分析したほうが、マーケティングの上で、有効な調査結果が得られるかもしれない。
本書は、「若い世代の子育てママは、ろくに料理が作れない」というような、一見事実であるかのようなステレオタイプなものの見方を、マーケティング分析の結果から完全否定している。
しばしば、マーケティングはこのような、見てきたかのような嘘をつく。
若い世代の子育てママは、実は和食の伝統を守っているというのを、本書は示しているが、目から鱗が落ちる思いで読んだ。

本書は副題の通り「団塊シニアと子育てママ」を中心にして語られる、世代論的な社会論としても読める。
興味深い内容を一つ紹介しておこう。

それは「内孫と外孫の逆転現象」について触れられた部分である。
「内孫」とは、男系の孫と考えると理解しやすい。
祖父母から見ると、息子の子どもにあたる孫である。
「外孫」とは、女系の孫と考えてよいだろう。
祖父母から見て、娘の子どもにあたる孫である。

旧来の日本では、外孫よりも内孫のほうが、祖父母と濃密な関係であった。
同じ名字を名乗り、家の跡取りになるわけであるから、当時の価値観からすれば、優遇されるのは当然だろう。

しかし、現在では、内孫よりも外孫のほうが濃密な付き合いになる、というのが本書で明かされている。
その理由はなんだろうか?

団塊世代と子育て世代の住環境や、「義母」と「嫁」という関係を読み解いていくことで、その理由が明らかになる。
このあたりの分析は、非常に面白かった。
本書は、マーケティング・世代論・社会論と多面的な読み方ができる、面白い本だと思う。

マーケティングの嘘―団塊シニアと子育てママの真実〈電子書籍Kindle版もあります〉
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