『逆流するグローバリズム』 竹森俊平/著

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グローバル化の象徴とも言える共通通貨「ユーロ」だが、ギリシャ問題が浮上してから、この試みの危うさを指摘する声は多くある。
ギリシャの崩壊は、ヨーロッパのみならず、グローバル化を逆流させ、世界秩序をも揺るがしかねないものとなるだろう。

グローバル化の進行は、多くのビジネス書では共通了解となっていることである。
グローバル化の先駆けであったヨーロッパにおいて、今グローバル化逆流の動きが起こっているのだ。

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今、ヨーロッパで何が起きているのだろうか?
著者の指摘は、共通通貨「ユーロ」という地域統合の象徴そのものが危機の要因となっている、という厳しいものだ。

本書では、ユーロ構想そのものに仕組まれていた陥穽を、第1章、第2章で検討している。
第3章では、ギリシャ救済の問題点を説明し、第4章以降はユーロ内で存在感を増すドイツの分析が主題となっている。

ユーロ問題を考えたときに、ドイツの存在を避けて通ることはできない。
経済力は、ユーロ発足以前から強かったが、最近では、その経済力を背景にした軍事面でも影響力を強めている。

ギリシャ危機が生じて、ユーロ圏内で多くの国が相対的に地位を低下させたことによって、現在のユーロは、ドイツ一人勝ちの状況である。

本書が示す、現在のドイツ人の姿には実に興味深いものがある。
ドイツ人は、インターネットを積極的に利用するものの、一種の恐怖心(Angst)を抱いているという。
そういえば、ドイツ発のグローバルなITサービスというのを聞いたことがない。
また、ドイツ人は株式投資を好まず、全国民の13%しか株式保有をしていない。
アメリカ国民では52%が株式保有をしているから、ずいぶんと差がある。
こうしたデータから、ドイツ人は伝統的、保守的というイメージが湧く。

現在のドイツを覆っている思想は、聞き慣れない言葉だが、オルドリベラリズムというものだ。
オルドリベラリズムの代表的思想家である経済学者、ヴィルヘルム・レプケの思想を紹介してみよう。

レプケは、いきなり価値観から話を始める。
彼によれば、「大衆」はダメ、だから「大衆社会」もダメ、反対に「伝統」や「家族」が社会的価値の前提として置かれるべきだという。

大衆化された社会では、誰しもが同じ嗜好を持ち、同じ生活パターンで行動するので、自然に大量生産、大量消費の経済が誕生し、独占がはびこることになる。
現在のインターネットの世界は、まさにそのようになっていると言える。
レプケのような見方からすれば、これはインターネットによって固有な伝統、文化が消えていき、世界全体の国民が「大衆」と組織されていくことを意味する。

このように、オルドリベラリズムは、「大衆」を嫌い、「伝統」、「文化」の重視に立脚した社会の発展を志向する。
これは、アメリカ的な経済自由主義とは、相容れないものである。
インターネットやグローバル資本主義は、「大衆」、「大衆化」が発展の鍵となるからだ。

グローバル化の弊害を指摘する本は多いが、すでにヨーロッパに反グローバル化の萌芽を見出している本は非常に珍しい。
英米系の理論に拠った経済学書が多い中で、大変貴重なものであると言えるだろう。

逆流するグローバリズム〈電子書籍Kindle版もあります〉
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