『図解 サラリーマンの決定力講座』斎藤 広達/著

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顧客の細分化とテクノロジーの発達、そしてグローバル化の拡大と、厳しさをますばかりのビジネスシーンにおいて、売り上げを確保し、利益を上げるために必要な考え方とは何か。それは、論理的判断をもとにした意志決定を行なうことに尽きる。いうなれば、何が目的なのかを明確にして、そこへいたる道筋で起こるであろうことを、事前にあらい出しておくのである。

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トラブルは必ず起こる!

どのようなプロジェクトであれ、まったくの無風で計画のすべてがなされることは皆無である。さまざまな紆余曲折があるのがビジネスなのだ。本書は、プロジェクトを妨げるであろう要因のうち、事前に予測可能なものに関しては積極的に起こりうるリスクとして認識し、あらかじめそれらをも勘定に入れておくことの必要性を繰り返し説く。なぜなら、そうすることでそれらの事項は「ハンドリングすることが可能な出来事」になるからである。

例えば、他社が競合製品を開発したとしよう。このような事態に対して、そのようなことは十分に起こりうることだと事前に予測していたら、アフターサービスを徹底することで差別化を図ったり、あるいはプラスアルファの機能が盛り込まれたワンランク上の商品を投入するなどして、対処することができる。だが、何の予想もしてなかったら、ただパニックになって、右往左往するばかりだろう。とりうる対策もさしてなく、せいぜい原価割れしてでも、ただ投げ売りをするのが精一杯かもしれない。

以上の例では、前者が攻めの対応であるのに対して、後者は完全に守りのそれである。守りに入ってしまっては、マーケットの主導権をとられてしまうことになるのは、言うまでもない。将棋を思い出すといい。一回受けにまわってしまうと、相手にとことん攻め込まれてしまう。たった一手のミスにつけ込まれ、防戦一方になるのだ。そうなってしまうと、逆転は難しい。そう、起こりうる事態を事前に考えておくことは、とても大切なのだ。

人間は、過去の成功と失敗が忘れられない生き物である

本書において語られるのは、何も仕事の技法ばかりではない。メンタルについても役に立つ記述がされている。特にわたしが興味深く読んだのは、人間の脳は目の前の状況が似ていると、過去と同じ反応をしがちである、という指摘である。

過去に失敗した状況と良く似たシチュエーションを前にすると、脳がまた同じ結果になるのではと防衛的な反応をしてしまいがちであるということは、身を持って体感していることである。それによって正しい判断が下せなくなる危険性も理解できる。

だが著者は、人間は失敗だけではなく、過去の成功体験に対しても必要以上に囚われる傾向があり、それは危険極まりなく、時に大きな失敗につながることすらあると主張する。要するに、わたしたちはルーティンワークを前にした場合、今回もきっと上手くいくという安易な思い込みから必要な調査を省いたり、慢心して取り組むということを無意識のうちにやってしまう、というのである。

当たり前だが、このような姿勢で仕事をしていると、思いがけないミスを誘発してしまうものである。本来なら成約することができるはずの案件他社にとられてしまう、などといった致命的な結果に結びつかないとも限らないのである。

ロジカルシンキングを身につけ、正しい判断を下そう!

人間は、過去の体験や感情の集積として出来ている。それゆえ時に思い込みが論理的な思考を遮断することがあるのは仕方のないことではあるが、冒頭でも述べたようにビジネスにおける意志決定において、ロジカルシンキングは必須である。成功であれ失敗であれ、過去は過去として切り離して考え、いま目の前にある課題に対しては思い込みを排除して、論理的に考え、判断をするようにしたいものである。

本書は練習問題形式で構成されているので、実際に考えながら読み進めていくことで、実地体験を通して論理的思考を磨くことができるようになっている。意志決定力を身につけたいと願う、すべてのビジネスマンにお勧めの一冊である。

図解 サラリーマンの決定力講座 (仕事筋シリーズNo.6) (PanRolling Library―仕事筋トレーニング)
図解 サラリーマンの決定力講座

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