イギリスがEUから離脱した原因と危機の一因を探る

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『欧州解体 ドイツ一極支配の恐怖』ロジャー・ブートル/著 町田敦夫/訳 書評


欧州解体―ドイツ一極支配の恐怖

まず、タイトルとして付けられた邦題については、いくらか誤解を生じるものと思われる。

原題は、「The Trouble with Europe: Why the EU isn’t Working, How it Can be Reformed, What Could Take its Place」であり、直訳すると「欧州問題:なぜEUは機能しないのか、どのような改革できるのか、EUに取ってかわりうるものは何か」といったところだろう。

日本語の副題から想像されるような、EUに君臨するドイツを、第四帝国と見立てるような代物ではない。

本書は、経済学的な視点から、EUについて論じたものである。
著者は、ギリシャ問題以降、顕著となった昨今のEUの混迷は、もともとその制度自体に問題があったものとして捉えている。

欧州の黄金時代は、小さな国家に分立していた時代であると述べ、EUの経済不振の原因は、国家間の競争を抑制してきたことだと、厳しい指摘をしている。

現在のEUは、本書の副題に掲げられている通り、ドイツ一人勝ちの状況である。
しかし、ドイツの繁栄は、輸出によって支えられているものであり、内需はそれほどでもない。
ドイツの輸出を支えているのは、統一通貨ユーロのおかげである。

ドイツは、EU諸国への輸出に大きく依存しているのである。
本来なら、輸入超過となっている国は、通貨の切り下げや、関税率を調整することによって、対策をとるはずだ。

だが、EU諸国は、通貨を統一しているので、このような自国のための金融政策を打てない。
その結果、ドイツと、EU諸国における貿易不均衡は是正されることがなく、ますます格差が広がるばかりである。

EU諸国の南北問題はよく知られているが、これは統一通貨という制度自体に仕組まれていたものだったのだ。

著者は、こうしたEUが直面する問題により、今後どういった展開を見せるのか見通しを立てている。

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EU解体のシミュレーション

ここでは、EU解体のシナリオを取り上げてみよう。

著者が本書で示しているいくつかのEU解体のシナリオのうち、最も興味をそそるのが南北分割による解体シナリオである。

現在、ユーロ圏は、経済的に豊かな北と、貧しい南にグループ分けすることができる。

例えば、イタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシャなどの南の国々がユーロを離脱して、新たに通貨を創設した場合を考えてみよう。
この場合、新通貨は確実に弱くなり、これらの国々が背負ったユーロ建ての巨額の負債は大きな重荷になる。

大規模なデフォルトに陥り、欧州の金融危機を引き起こすことになるだろう。
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逆に、ドイツを中心とする北の国々が離脱し、残った南の国々がユーロに留まった場合を考えてみよう。
ユーロは弱い通貨となり、北の国々の新通貨は強くなる。
南の国々の負債は、ユーロ建てのまま引き継がれることになるから、デフォルトを避けられないこともない。

だが、このシナリオは、北の国々の連携が難しいという課題があるので、現状では実現可能性は高くないが、いつかこうした事態を迎えるのかもしれない。

このように示唆に富む分析が、至るところで披露されていて、興味深い読み物である。
EUの未来について考えたとき、大いに参考になる一冊だ。

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