『地名の楽しみ』今尾恵介/著

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東京都大田区には田園調布という地名があります。
東京を代表する高級住宅街として非常に有名なところです。
有名企業の経営者や芸能人などが、たくさん住んでいる町です。

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実は、この「田園調布」という地名が登場したのは、歴史的に見ると、とても新しいものです。
田園調布の由来は、イギリスの田園都市を参考に、日本の都市計画に導入したものでして、渋澤秀雄(栄一の息子)や矢野恒太らが造成した町並みです。
当初、今の田園調布一帯の地名は、東京府荏原郡上沼部というものでした。
昭和7年になって、荏原郡が東京市に取り込まれることによって、東京市大森区田園調布と、正式な町名として名乗ることになったのでした。
その後、昭和45年には近隣に、田園調布本町、田園調布南という地名もあらわれました。
田園調布の場合では、荏原郡から大森区へと行政区分が変わるタイミングで正式地名に採用されていますが、こうしたケースは多く見られます。

例えば、東京多摩地区には多くの新田村がありました。
第8代将軍、徳川吉宗による新田開発の成果です。
鈴木新田、野中新田、本多新田というような地名がたくさんありました。
こうした地名は、いかにも農村っぽいということで、新興住宅地となった昭和中頃には、市制施行とともに「新田」という部分を削られて、正式な地名として残っているケースが多いようです。

このように、農村部が住宅街として開発されるとともに、「農村っぽい地名」の多くが名称を変えました。

また、「○○台」という地名もよく見られます。
古くから支配者層を中心に、高台に住むことが好まれました。
そういった歴史的経緯もあってか、安定した地盤の上に家が建っていると、人は安心するものです。
東京でも駿河台、麻布台、白金台、目白台、旗の台、青葉台、南平台、などの多くの「○○台」があります。

しかし、「○○台」という地名だからといって、歴史的に磐石な地盤の上に家が建っていると思うと、意外とそうでもなかったりします。
新興住宅街などでは、低湿地に少し土を盛っただけの「○○台」がたくさんあるそうです。

本書は、このような地名に関するあれこれのエピソードを、わかりやすく紹介、解説しています。
歴史好きな方には、特に面白く読める一冊だと思います。

地名の楽しみ〈電子書籍Kindle版もあります〉
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