『ビスマルク ドイツ帝国を築いた政治外交術』飯田洋介/著

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学校で世界史を習った時の記憶を頼りに、ビスマルクについて語るとなると、どうしても「鉄血宰相」というイメージがつきまとう。
私にとってのビスマルクのイメージは、立派なヒゲを蓄えて、軍服を着て、勲章をたくさん胸につけている、勇ましい老将という感じだ。

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ビスマルクについて説明してみると、次のようなものになる。

ビスマルクは、19世紀ヨーロッパ史における代表的な政治家である。なによりも長く分裂状態にあったドイツを国民国家として統一に導き、1871年ドイツ帝国を創建したことが、その功績で、軍事においては、三度にわたるドイツ統一戦争を勝利に導いた。
また外交においては、「ビスマルク体制」と称される同盟システムを構築した。
内政面に目を向けても、普通選挙制度や社会保険制度の導入など、20世紀に本格的に到来する大衆民主主義への道筋をつけた。試験の模範解答としては、このようなものだろうか。

こうした功績から、思い描くビスマルクのイメージとはどんなものだろうか?
「鉄血宰相」を彷彿とさせる武断的で強力なリーダーシップを持ち、ドイツ・ナショナリズムを体現する天才的な政治能力を持った人物。
大体、このようなものではないだろうか。

しかし、この本を読んで明らかになったのは、そうしたイメージは後世作られたものである、という事実だった。

これまで、ビスマルクの評価をめぐっては、歴史学界において大きく揺れ動いてきた。
第二次世界大戦直後までは、ドイツを建国した国民的英雄としてビスマルクを賛美に近い形で評価する向きが、圧倒的に多かった。
だが、徐々に、批判的な評価も目立つようになり、議会政治を抑制し、ナチズムにも通じるような支配構造を築いたとして断罪するものすら、見受けられるようになった。

いずれにしても、力強いイメージで捉えられていることには変わりないと思う。

だが、近年の研究によれば、その実像はだいぶ異なっているようだ。
ビスマルクは、これまで受け継がれた伝統的な権益に執着する生粋のプロイセン・ユンカーであり、ドイツ・ナショナリズムとは本来かけ離れた存在であった。
さらに、三度にわたるドイツ統一戦争も、最初から彼が戦争を志向していたのではなく、結果的にそうなったのである。武断的なイメージで捉えるのは間違いなのだ。
また、有名な「鉄血演説」は明らかな失言であり、多くの批判にさらされたものだった。
この演説に、国民が熱狂していたのではないのだ。

本書が明かすところによると、実際にビスマルクが英雄視されるようになったのは、ヴィルヘルム二世との対立から首相を辞任した後のことのようだ。

本書は、ビスマルクの生い立ちから、ユンカーとしての面、代議士としての面、外交官としての面、首相としての面など、多面的に考察を深めている。
近年の研究を踏まえ、一次史料に即して実証的かつ公平に論じることで、等身大のビスマルクの実像に迫っている。

新書ということもあって、長すぎず短すぎず、ちょうど良い分量にまとまっているのが良い。
ビスマルクについて、「世界史」の授業以来、学ぶことになる読者とっては、分かりやすく、満足な仕上がりとなっている。

ビスマルク ドイツ帝国を築いた政治外交術〈電子書籍Kindle版もあります〉
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