『ハウス・オブ・デット(HOUSE OF DEBT) 』アティフ・ミアン/アミール・サフィ/著 岩本千晴/訳

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本書は革命的な経済学の書である。
著者は、金融危機の要因は、家計の債務であるという。
従来の経済学では、金融危機の要因について、ファンダメンタルズ説、アニマルスピリット説、銀行融資説などで説明してきた。
これらの説に対して、膨大なデータ分析と、LL(レバード・ロス、債務損失増幅)理論に基づいた反証を試み、家計の債務こそが危機の要因であると、著者は唱える。

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以下、著者の考察をまとめてみたい。
深刻な不況の前には、必ず家計債務の上昇が見られる。
家計債務の上昇と、住宅資産の暴落が、家計のバランスシートを壊し、それが総需要の減少、雇用の減少を招くのだ。
2008年のサブプライム危機では、銀行の破綻は経済全体に悪影響を及ぼすとして、政府によって救済措置が取られた。
その代わりに、家計債務をかかえる何百万もの人々には、支援が行なわれなかった。
金融危機のたびに、世界中の国々で、このような事例を見出すことができる。
なぜ、銀行は救済されるのに、個人は救済されないのか?
そうした問題に、本書は深く切り込んでいる。

サブプライム危機のような深刻な金融危機においては、誰がその損失を被ることになったのかを考えてみよう。

まず、本書で示されているデータ「住宅所有者のレバレッジ率」によれば、総資産の多い世帯ほど金融資産が多く、債務が少ない傾向にあり、総資産が少ない世帯ほど金融資産が少なく、債務が多い傾向にある。
貧しい世帯では、住宅以外に殆ど資産を持っていないわけである。
しかしながら、住宅はローンを組んで買っているのだから、返済分を除けば、実質的に債務ということになる。
言うまでもないことだが、金融危機は、富裕な人々よりも貧しい人々を直撃する。
サブプライム危機では、債務者の住宅の差し押さえと、投売りによって、貧しい者はますます貧しくなった。

これによって、何がもたらされるかというと、景気の低迷である。
というのは、富裕な人よりも貧しい人のほうが、限界消費性向が高いからだ。
限界消費性向の高い人ほど、大きく景気拡大に貢献する存在なのである。
普通に考えてみて、年収100万円の人に100万円与えたるのと、年収1億円の人に100万円与えるのと、どちらの方が、経済効果があるか考えてみると分かりやすい。
年収100万円の人であれば、新たに100万円の収入があったら、いろいろなものを買うだろう。

しかし、年収1億円の人に、新たに100万円の収入が加わった場合、消費よりも貯蓄に回る公算が高い。詳しくは、本書中にある「債務比率別の限界消費性向」を参照してほしい。

金融危機の損害は、多くの債務を持つ人々=最も景気に寄与する人々に集中するから、彼らは消費を控え、結果として景気低迷が引き起こされる。

そう考えると、金融危機のたびに行なわれる、銀行を救済し、個人は救済しないという理屈は、完全に間違っている。
本来、銀行の債務を負担するのは、銀行の株主や債権者のはずだ。
納税者のお金を使って、銀行の株主や債権者を救済保護し、家計債務の問題を無視するのは、反生産的である。

銀行の株主と債権者への支援は、税金を限界消費性向の低い(所得が増えても消費に影響しない)人々に提供することになる。
先ほど書いたように、景気低迷は、債務のある家計の総資産の下落によってもたらされるものだ。
だから、銀行を救済するのなら、個人を救済したほうが、景気拡大につながるのである。

本書は、このような斬新な分析がふんだんになされており、読者に新しい視点を提供することになるだろう。

ハウス・オブ・デット
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