低成長社会・日本の成長戦略は土地利用にあった! 『日本の論点2016~17』 大前研一/著

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アベノミクス、年金制度、TPP、農業、教育、中東情勢、ウクライナ問題、イスラム国など豊富なトピックを、簡潔に整理した一冊である。この本のなかから、特に面白かったトピックについて書いてみよう。

資本主義における成長には、三つの要素が必要とされる。
労働と資本と土地である。大学でそう習ったのを覚えている人もいるだろうが、この原理原則に立ち返って、現在の日本を分析してみたい。

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日本に住んでいる誰もが逃れることが出来ない「人口減による弊害」

まず、労働については、人口減少社会に突入し、毎年30万人もの労働人口が減少している現状では、まったく期待できない。

人口が減るということは、それだけ社会の基板が弱くなるということである。これは、何も経済面だけに限らず、社会全体に関わる問題である。いわゆる「日本はもう詰んだ」という議論は、この人口減が土台になされている。

次に資本についてはどうだろうか。
これについても高齢化が進んだ先進国では、どこの国でもカネ余り状態である。
日本ももちろんそうだ。量的緩和によってカネ余り状態になっているものの、過剰な資本を振り向ける有効な投資先を見出せない状況だ。平たく言えばお金はあってもそれが動かないがために、社会全体にお金がまわらないのである。

日本は狭い国ではない?

では、最後に土地については、どうか。
日本の場合、一見すると国土が狭く山地ばかりの国だから、成長に使える土地があまりないように思われる。

だが、それは間違った見方である。この国では、土地に関しては多くの規制があるために利用が制限されているだけであり、さまざまな規制を取り払えば、大都市圏の土地供給はほぼ無限にできるのだ。

労働も資本も日本経済の成長の糧とならないのだから、土地を有効利用するのは、唯一の成長機会といえるだろう。

容積率の規制緩和という成長戦略

例えば、著者が主張する「容積率の緩和」について見てみよう。

そもそも容積率とは、どのように決められるのだろうか?
容積率は、国土交通省のさじ加減一つで決まるものであり、なんの根拠も持たないものなのである。安全性などは、まったく問題にならないのだ。

東京の容積率を、他の国際都市と比較してみよう。東京23区で道路や公園などを除いた、建物が建てられるエリアの容積率の平均は136%である。ニューヨークのマンハッタンの平均容積率は、住宅街で631%、オフィス街では1421%だ。

つまりマンハッタンの住宅街では、建物の高さの平均は6階建てで、オフィス街では14階建てということになる。

山手線の内側だけ見ても、建物の高さの平均は2.6階である。一方、山手線内側と同じくらいの広さを持つ、パリ中心部における高さの平均は6階である。

このように見ていくと、いかに東京の容積率が低いのか、土地が有効利用されていないのかがよく分かると思う。著者の主張は、容積率・建蔽率・高さ制限などは、各自治体に権限を渡すべき、というものである。ちなみに本書によると、世界中で容積率を全国一律に国が決めているのは日本と韓国だけだという。

容積率の規制緩和こそ、低成長社会・日本が取りうる唯一の成長戦略

そもそもこれら先の日本経済は、人口減少という避けようのない問題を抱えてやっていかなくてはならない。そんな状況にあって土地の価格が上がらなければデフレからの脱却が出来ないのであれば、日本に残された選択肢は「土地の有効利用」しかないのではないだろうか。「容積率の緩和」という大前氏の主張は、非常に説得力を持っていると思う。

この「日本の論点2016~17」は、土地に関する記述以外においても、同様の示唆に富む指摘が随所に見られる。読みどころ満載の本書は、日本の現状を理解する上で有用な書となるだろう。

大前研一 日本の論点2016〜17〈電子書籍Kindle版もあります〉
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