『中原圭介の経済はこう動く〔2016年版〕』中原圭介/著

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アメリカの利上げを軸に、世界経済・日本経済を読み解く


本書は、アメリカ、EU、中国、そして日本と、4地域における2016年の経済動向を予測、分析した本である。それぞれが抱える個別の問題は異なるが、共通点もある。金融緩和によって生まれた過剰の資金の流れの行方である。

金融緩和は、資金をだぶつかせ、投資へと向かわせることになる。要するに、バブルが生まれるのである。そこに参加できるのは、余剰資金を持っているものだけであるため、が投資をするのである。活気のある市場にお金を入れることが出来るから、いやでも儲かるが、資金がないものはただ指をくわえてみていることになる。そうなると、どんどん格差が生まれるというわけだ。実際、アメリカをはじめ、格差は広がる一歩である。だが、問題は格差だけではない。

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バーチャルがリアルを食い尽くす現代の金融資本主義

投資家は、これ以上儲からないと判断すると、一気に資金を引いてしまう。そうなると、暴落が起こる。さらに、今日は世界の市場はつながっている。一箇所でそのようなことが起こると、連鎖的に起こるのだ。その混乱は、金融市場だけにはとどまらない。サブプライムやリーマンショックといったものが、世界中の経済を混乱させたことは記憶に新しい。金融市場というバーチャルな空間の動向が、実体経済を打ちのめし、混乱させるのである。風が吹けば桶屋が儲かるではないが、世界は玉突き状に影響が及ぶように出来ている。

アメリカはいまだに世界の中心

本書の軸となるのが、アメリカの利上げである。著者は2015年中の利上げはないのではと記しているが、実際は2015年12月に利上げが決定された。つまり、著者の予測は外れてしまったわけであるが、だからといって、本書が無益なわけではない。

なぜ、アメリカの利上げがポイントとなるのか。それは、アメリカのプレゼンスが小さくなったとはいえ、いまだ世界経済を牽引するのは、アメリカであるからである。利上げとは、ローンの金利が上がることを意味する。要するに、家計における金利負担分が上昇することで、他への支出が削られるのだ。アメリカは、基本的にローンを組んで物を購入するので、金利の上昇は生活を左右する。

このアメリカ市民の生活が変化することは、アメリカ市場に輸出することで利益を上げている日本企業にも、当然影響を与える。物を買わなくなってしまったら、日本を始めアメリカ以外の地域にも、影響が及ぶのである。

アベノミクスは完全な失敗政策である

では、これからどのようなことが起こるのだろうか。著者は、はっきりとはわからないと、正直に書く。なぜなら、アメリカにおける金融緩和は、まさに未曾有のものだったため、過去にそのような事例がないため、はっきりとしたことがいえないというのである。だが前述したように、金利が上昇して、その分だけ可処分所得がへることはたしかである。それが経済にとってプラスでないことは、誰にでもわかる。

以上、アメリカに関することを軸に、本書では、さまざまな示唆に富むことが書かれている。特に、著者が著書の中で必ず主張する実質賃金で経済動向をはかる重要性は、アベノミクスが失敗していることの証明ともなっている。本書は2016年版と謳われているが、この1年間にとどまらず、経済の構造そのものを理解する上で、うってつけの本になっている。

中原圭介の経済はこう動く〔2016年版〕〈電子書籍Kindle版もあります〉
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