『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記』竜田一人/著

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今だ終わらない福島原発事故復旧作業の実態をリアルに描いた必読マンガ


2011年3月11日の、東日本大震災による被害の中でも、福島第一原発による被害は、今日も収束することなく続いている。メディアでの報道はなくなったが、今日、いまこの瞬間も、むき出しになった原子炉建屋からは、放射性物質が漏れ出しているのである。かつてであれば、大事故として連日報道される事態であるが、現状はそうではない。情報が聞こえなくなったのには、各所によるさまざまな思惑もあるのだろうが、権力による思惑以前に、わたしたちにもまた、恐ろしい事態を直視したくないという意識が働いているのだろうと思う。だが、原発事故は収束することなく、今現在も「いまそこにある危機」として、現実のものとして存続している。

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ハローワークに原発作業員の募集が

本作は、実際に福島第一原発で復旧作業にあたっている作者によって描かれた、今日の福島原発の様子を描いたルポマンガである。本書には、第一原発での実際の作業の実態のみならず、作者が福島第一原発で働くにいたったきっかけの説明から、実際にハローワークに足を運んで仕事を得るところまでをも描いている。その内容は、実際に現地で働いている当事者でなければわからないことであふれている。作業毎に行なわれる除染や、休んでいるときの様子など、その描写は原発内にとどまらず、そこで働いている人々の生活全体を描き出している。

原発作業員の労働状態の実態とは

特に目をひくのが、作業者の待遇である。これは作者の場合であるが、原発復旧作業の仕事を契約しても、すぐに仕事にあたったわけではなく、寮に待機させられる日々が続いたという。ところが、まだ仕事をしていなく、収入もない状態であるにも関わらず、寮の代金と飲食費用が会社への借金と言う形で、発生していたという。要するに、将来収入を得た際に、これらの費用の分だけ天引きをするということなのだが、働く前から借金を背負わされるだなんて、江戸時代の苦界ではあるまいにと、作者は口にする。本書には、このような、実際に復旧作業に関わっている人しかわからない実態が、これでもかと描かれているのだ。

原発推進=右翼、原発反対=左翼という図式

原発に関わることは、イデオロギーの問題として語られがちである。だがそれは間違いである。かつて埴谷雄高が、核兵器について、原爆はいい奴も悪い奴も全部一緒にやっつけちゃう、という言い方をしていたが、これは、原子力災害においても同じである。あふれ出した放射性物質の前では、政治的主張の違いや資産の多寡などは一切関係なく、みな同じだけの被害を蒙るからである。

放射性物質による被害は、気合いでは乗り越えられない

また、放射能汚染は、どこまでも科学的な問題である。日本人はともすると、すべてを情緒の問題として、語りがちである。経営や人生の各場面における意志決定の際にも、論理的に導き出して得た答えよりも、なんとなくの雰囲気や周囲への気持ちから判断してしまうということが、多々ある。だが、このような結論の出し方は極めて非論理的であり、誤った結果に結びつく公算が非常に高い。原発問題に関しては、特に科学的な視点を重要視すべきなのは、言うまでもない。気合いや情熱だけで、放射性物質の汚染はでどうにかなるものでもないのだ。

フクシマを忘れてはならない

本書を読むことで、いまこの瞬間も作業が続いているその様子を学ぶことが出来る。まずは、その作業の実態、今日の様子を知ることから始めよう。この弓なりの列島で暮らしている人間であるならば、福島のことは、忘れてはならない。

いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(1)〈電子書籍Kindle版もあります〉
いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(1)〈電子書籍Kindle版もあります〉

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