『ビジネスの先が読めない時代に 自分の頭で判断する技術』 小林敬幸/著

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本書は、ビジネスで必要となる情報の扱い方の基本姿勢を学ぶための本である。
ハウツーものではなく、基本的な心構えを理解するものだ。
著者が、強調するのは「教養」を得ることだ。
欧米の教養教育(リベラルアーツ)の科目の中で、日本で重視されていないのは、弁論術、論理学である。情報を集め、分析し、発信していくときに、こうした知識は大きな力になる。

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本書では文芸作品や歴史、経済書、ビジネス書などへの言及、引用が多く見られ、「教養が大事」という著者の姿勢がよく伝わってくるものだ。
平易な文章で書かれていているのだが、かなり濃い内容となっている。
本書は一冊で、情報受信の方法(新聞やネット情報の読み取り方など)、そして情報発信の方法(企画書の書き方、議論の進め方など)を、両方学ぶことができる。

本書の中から気になった部分を少し紹介してみよう。
「将来を予測して正しく判断する方法」について、著者は三つあげている。
・公開情報を調べる
・歴史的、体系的な文脈(コンテクスト)を理解する
・些細な生の情報、非言語情報をヒントにする
著者は試験のヤマを張るのが、得意だという。
それで東大に入ったというのだから、相当なものだ。
「試験のヤマを張る」というのは、まさに「将来を予測して正しく判断する方法」に他ならない。
大学時代に試験のヤマをあてた経験が語られているが、これは著者の情報能力の高さを窺い知るエピソードとなっている。
「ヤマを張る」コツについては、是非本書を読んで体得したいものだ。

そして、私が個人的に好きなのは、第5章である。
第5章は「ヘンな議論で負かされない12カ条」と題されていて、一般社会でまかり通っている変な議論が、アリストテレス以来の論理学の視点から、分析されているものだ。
一部紹介すると、「変な質問にはまともに答えないのが良い」と述べられていて、具体的な変な質問として、「多重質問」や「教育的質問」などがあげられている。
例えば、「もう、不倫をやめた?」という質問は多重質問にあたる。
この質問に、「はい」、「いいえ」どちらで答えても、以前不倫をしていたことを認めることになる。
それは、質問の中に「以前不倫をしていた」という前提となる別の質問を忍び込ませているからだ。

また、「教育的質問」とは、上司が新入りの社員に対して「この製品を作っている会社はいくつあると思っている?」というような質問のことだ。
自分が知っているのなら、質問などせずに、さっさと情報開示すべきだ。
質問者は、会議で実益のある結論を得ることよりも、自分が上位にあることを示すことに優先順位を持っているとしか思えない。
結果として、社員全員の士気が下がる。

この章を読むと、いかに普段、無意味な議論の進め方をしているということが実感できると思う。
本書を読んで、そういったことを改めていかなければ、欧米流のエリートは育たないであろう。
読後の感想として、日本の教育から教養主義が廃されていく風潮には危機感を覚えた。

ビジネスの先が読めない時代に 自分の頭で判断する技術〈電子書籍Kindle版もあります〉
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