世の中には、人脈形成に関する本があふれているが、本書はその中でもずば抜けて有益な本である。この本の特徴は、なぜビジネスにおいて人脈の形成が必要不可欠なのかを、はっきりと書いているところにある。それが、世間一般に流通している人脈本とは異なる点であり、本書独自の価値となっている。
著者は、人脈とは自分らしい仕事、働き方をして行く上で必要なものであると定義する。そして、それは戦略的に行動することで、誰でも構築していくことが可能であると述べる。よりよい仕事環境に引き上げてくれる存在として、人脈をとらえるのだ。
個人の時代=人脈の時代
人脈の構築については、これからの日本の行く末を考えたときに、その重大さがわかるだろう。何故なら、これから先にその影響が本格的にあらわれるであろう少子高齢化による社会構造や産業構造の変化にあわせるかたちで、これからこの社会で生きていく人間は、企業の存続寿命よりも個人の労働寿命のほうのが長くなるという事態に直面するからである。
一般的に企業の寿命は30年と言われているが、65歳定年制が実施され、さらには年金の支給が70歳へと引き上げられるのではないかとの憶測もなされている現在、労働者は生活のために働き続けなければならない状況に、いやがおうにも立たされているのである。
このような現状を踏まえ、ひとつの会社で一生を終えるということが難しくなっていることを考えると、人脈を構築し、自分で現状の改善や未来を切り開いていくための努力が必須となることが肌身にしみてくる。以上のようなことを踏まえながら、本書は戦略的な人脈構築の必要性を説いていく。
人脈を形成するための5つの戦略
著者は、「人脈レイヤー」「人脈スパイラル」という言葉を用いて、自分を引き上げてくれる人物をしっかりとつかまえるための人脈構築について述べるのだが、そのやりかたは、いたってシンプルなものである。
具体的にいえば、自分にタグをつける、自分を説明するコンテンツの構築する、仲間を広げていく、自分の情報を流通させる、チャンスをとりにいく。以上5点を徹底していくことで、まわりに自分の情報がいきわたるようになり、不意にいまよりも高いステージにいる人物から声をかけてもらえるようになると、著者は述べるのだ。これは、人脈形成に関して、極めて簡潔にその要諦をまとめていると言える。
チャンスの神様は前髪しかない
また、人脈構築とあわせて何度も語られているのは、せっかくのチャンスが来たときに、それをしっかりと掴み取る勇気がなければ、なんの意味もないということである。著者は自分を上位レベルへと引き上げてくれる仕事というのは概して未体験の世界であり、不安になってしまうのは仕方がないと述べたうえで、それでもチャンスをつかまなければ、階段を駆け上がることはできないと強調する。これは、たしかにそのとおりだろう。
人間というのは、ある状況に投げ込まれて、その中でもがきながら、次第に慣れていく生き物である。たしかに未知なる状況に飛び込むことは不安以外のないものではないが、だが、考えてみて欲しい。わたしたちは、ずっとそうして生きてきたではないか。学校など行ったこともないのに小学校に入学し、結婚をしたこともないのに結婚をしたり、突然人の親になったりするのが人生である。未知のものなのに、そこに飛び込まなければ話が始まらないというのが、この世界なのだ。
だが、人間には想像力が発達しているから、時に不安になってしまうのだ。不安が夏の雨雲のように大きく膨らんで、せっかくのチャンスを断ってしまうことがあっては、もったいない。そうならないためには、普段から実力を磨いておいて、自分に自信が持てるようにしておくことに尽きる。
ブログでの情報発信は人脈形成に役立つ
ちなみに先程挙げた人脈構築に必要な5つの事柄は、ブログを用いて情報を発信していくことの利点として述べられていることと、まったく同じであることに気づく。勉強会を中心としたオフラインでの活動にあわせ、オンラインではブログで自らにタグをつけ、コンテンツを構築し、仲間を作って、自らの情報を広げていく。ブログは人脈構築と相性がいいといえる。本書の人脈構築術を実践する際には、ぜひ、ブログでの情報発信もあわせて行うといいだろう。
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