おもてなしする側の接客姿勢について書かれた本は多いものの、サービスを受ける側について書かれた本はあまりない。
そんな動機から本書は執筆された。
著者のいつか氏は、旅行作家としてこれまでに世界50ヶ国以上を周り、世界各国の一流の人たちと交際してきた方だ。
そうした経験を通じて、著者は、一流の人に共通する性質を見抜いている。
それは、「人を大事にすること」である。
高級レストランに入っても、柱のかげになるような目立たない席に通される人もいれば、中央の目立つ席に通されて、お店から色々な特別待遇を受ける人もいる。
その違いは何だろうか?
お店が、このようにお客さんを“差別”するのには異論もあるだろうが、もちろんお店側にもそれなりの言い分がある。
高級レストランや高級ホテルでは、お客さんもお店の一部になってもらう必要があるのだ。
高級店に、下品なお客がいると、他のお客の気分が損なわれてしまうのだ。
というわけで、お店側としては、お客を選り好みするのだが、その基準は何なのだろうか?
そして、お店から「上客」と認められ、一流のサービスを受ける人になるには、どうすれば良いのだろうか?
そういったことを知りたい方におススメの本だ。
本書の内容をかいつまんで言えば、一流のサービスを受けるコツは、「相手を大事にすること」である。
高級レストランに入るのならば、それなりに身だしなみを整えてから、入店するべきである。
身だしなみを整えないで、高級レストランに入るのは、お店に対して礼を欠く行為である。
別に高級品を身につけなくても良い。ただ、清潔感には気をつけてほしい。
靴は汚れていないか、髪や爪はきちんと整えられているか、口臭は無いか。
こういったことには気を配ったほうが良い。
しかし、それにも増して重要なのは、従業員との接し方である。
従業員に命令口調や、横柄な態度をとっていないだろうか。
とりわけ、高級ホテルや高級レストランとなると、利用者は社会的地位の高い方が多く、人を指図することに慣れている方が多いと思う。
特に年配の方ともなれば、若い従業員は小僧・小娘のようにしか映らず、横柄な態度で接してしまうのも無理はない。
だが、こうした態度は、相手の従業員に良い印象を与えない。
相手の従業員に良い印象を与えないと、結果的に自分が損をすることになる。
こうした態度では、一流のサービスを受けることは無いだろう。
従業員も人間である。
だから、感じの良い客には積極的にサービスしたいと思うし、そうでない客には、それなりのサービスしかしないと思うのは、当然と言える。
本書は、レストラン、バー、すし屋、ホテル、百貨店、旅行会社など、様々なシーンで、どのように振舞えば、一流のゲストになれるのかを学んでいくものだ。
著者は女性だが、こういった本は、特に男性に広く読んでもらいたいものだと思う。
このような振る舞いができる男性は、どこに行っても重宝されることは間違いない。
本書を読んで、一流のゲストになってみたいものである。