孫子の兵法に関する本が、このところ数多く出版されている。だが、2500年前の戦略思想の本をそのまま理解するのは難しい。本書は、まんがという表現形式で物語にのせて、その概略を解説していく。
用務員のおばあさんから教えてもらった孫子の兵法
主人公・米倉舞は、都会でのブラック企業の勤務をやめ、地元へ帰って米穀類販売会社「オクダ食糧」に再就職する。再就職の理由は、とにかくこの会社が取り扱うお米がおいしかったからという単純な理由であったが、やる気は人一倍だ。だが、やる気だけでは回らないのが仕事の常で、入社早々トラブルを起こしてしまう。そんな折、用務員のおばあさんから慰められている折に、ふと孫子の兵法の話を聞き、その精神をビジネスにいかすことが出来るのではないかと考えるようになる。
本に書いたあったことは、とりあえず実践してみる!
本書の特徴は、ビジネス書において必ず書かれている「本に書かれている内容を実践しなさい」という言葉を、主人公が着実に実行している点にある。要するに読書をしたあとにただ読みっぱなしにするのではなく、わたしたちはこんな風にことをすすめていけば、本に書かれている内容を血肉にすることが出来るのだということがわかるのである。
だが、本に書いてあることを実行しようとするときに、その言葉の一字一句そのままにとらわれてしまってもいけない。特に「孫子の兵法」は2500年も前に書かれた兵法の本である。要するに、戦争のための戦術や心構えに関するものなのだ。それゆえそれをそのまま右から左へともっていくだけで仕事上の問題が解決したり、技術が向上したりする類のものでもない。大切なのは、そのいわんとしているところを汲み取り、その本質を自分の情況に置き換えて、いかしていくことである。本書はその性質上、このような読書を行動にうつしていく上で真に求められる姿勢を提示してくれるという点でも実用的である。
戦略書はビジネスと相性がいい理由は?
本書を読んでいて思ったことは、戦略書とビジネスとの相性のよさである。本書のなかに、戦略書は「命がけの現場で人はどう動くか」が書いてあるので役に立つというセリフがあるのだが、大げさにいえばそういうことになるだろう。それゆえ、出来るビジネスマンは、戦略書を読むのである。
昨今企業戦略の際によく耳にするランチェスター経営も、やはり戦争における戦略をもとにして編み出されたものである。そのためか、「孫子の兵法」において言及されていることは、ランチェスターのそれと一致する点が多い。
例えば、本書における例を挙げると、自分の商圏に全国レベルで業務を展開している大手企業が進出してきたときの対応である。全国レベルで見たら、売り上げから従業員の数にいたるまでその大小は比較するまでもないだろうが、そこで諦めてしまってはいけない。小さな商圏に限ってみたら、そうではないことに気がつくはずだ。互角に戦えたり、場合によっては自分たちのほうが有利な場合すらあるかもしれない。要するに、自分たちに分がある部分を見つけだして、そこで勝負をするのである。いわゆるポジショニング戦略である。戦略書を読むことで、このような思考を身につけることができるのだ。
一生懸命だけでは、結果はでないもの!
今日のような成熟社会におけるビジネスの現場は、一生懸命やっていれば何とかなるということは、まったくの幻想となっている。力技で押し通せたのは、はるか昔のことなのだ。狙いを定めて、効率よく動くことこそが、いま求められているのである。
そのためには、戦略をもたなければならない。本書を読めば、その基礎の基礎から理解できるはずである。
まんがで身につく 孫子の兵法 (Business ComicSeries)
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