中学受験で女子御三家と称される名門校、桜蔭・女子学院・雙葉をリサーチした本である。
著者は、20年以上に渡る中学受験指導の実績を持ち、これまでに300名近くの子どもたちを女子御三家各校に送り出してきた。
教え子に直接取材して、各校の実態をありのままに語ってもらったということで、巷によく出回っている学校宣伝本の類ではない。
女子御三家、それぞれの特徴と印象をまとめた本
私自身が、これまで付き合いのあった女子御三家の出身者を通してみたイメージは、桜蔭=ガリ勉、女子学院=地味、雙葉=お嬢様というものである。
本書のリサーチによって、得られたことを簡単にまとめてみたい。
《桜蔭》
・生徒の特徴
頭が良い、個性的。
・勉強
各教科とも大変レベルが高い。(学校の勉強についていくために塾に通っている生徒も多い)
とりわけ、数学の授業には力を入れている。
・進学
東大を始め難関校に多数合格。
・部活
サークル的な週一の活動と、本格的な活動と二つに分かれる。
・個性的な教育
5月~11月まで、週1時間は「プール」の授業がある。
「礼法」の授業がある。
・その他
学食がない。
《女子学院》
・生徒の特徴
自由、マイペース。
・勉強
文系は授業だけで、早慶にも合格できるほどハイレベル
理系に関しては、塾に通わないと厳しい
・進学
先生の面倒見が良くない。大学受験、進路のアドバイスなし。
早慶に多数合格。
・部活
生徒が自主的に運営にあたるため、顧問の力が弱い
上下関係厳しい
・個性的な教育
自由闊達で、校則はわずか四つしかない。
《雙葉》
・生徒の特徴
お嬢様、気配りができる。
・勉強
受験勉強に重きをおかず、独自の教育を大切にしている。
英語は進度速く、高レベル。
数学は進度遅く、低レベル
・進学
進路指導は特にしない。
早慶に多数合格。
・部活
体育会系で上下関係の厳しいクラブが多い。
・個性的な教育
中学3年で第二外国語としてフランス語、高校に進むと「英語」「フランス語」のどちらかを第一外国語として選択することになる。
・その他
御三家の中で唯一、付属小学校がある。
女子御三家出身者は、ガールズトークが苦手?
各校の特徴は、概ね、私のイメージに沿ったものだったが、新たな知見を得られる箇所も多くあった。
例えば、本書で紹介されている女子学院出身者の言葉を取り上げてみる。
《「みんな好き勝手にしている感じで、JG(女子学院の略称)の居心地は本当に良かったですね。私立の女子校に入った周りの人に話を聞くと、いわゆる『女子文化』ってあるじゃないですか。みんなで一緒にお弁当を食べるとか、みんなで放課後遊びに行くとか。そういうのに馴染めない子がJG生ですよ」》
もっともこれは女子御三家全般に言えることなのかもしれないが、特に女子学院出身者は自由な校風でマイペースな子が多いため、大学に入った後に「女子文化」に馴染めなず、友達付き合いで苦労する人もいるという。
私の大学の後輩で、まさにこのタイプの女子学院出身者がいた。
彼女は孤高の人で、決して人と交わらなかったし、いつどこで見かけても難しい本を読んでいた。彼女を知っていたので、女子学院についてのこの記述には、妙に納得してしまった。
女子御三家の校風がわかる
本書は、各校出身者の生の声を通して、それぞれの学校の校風を描き出すのに成功している。
本書を通じて得られた各校の印象は決して的外れなものではないと思う。
中学受験生の子を持つ親御さんや、受験産業に携わる方などに是非ご一読されることおすすめしたい。