マッキンゼー・グローバル研究所の2011年のデータによれば、世界の上位600都市に住む人口は世界の人口の約20%であり、世界総生産(GWP)の半分を創出している。
このデータは、人口及び世界総生産が一部の地域に集中していることを示している。
今後、こうした傾向は強まり、2025年には、これら600の都市だけで、世界総生産の67%を占めるまでになるという。
現在、どの国を見ても、都市の成長率は国家全体の成長率を上回る傾向にある。
例えば、2010年から2025年のあいだのブラジルの年次成長は3%だが、サンパウロの同時期の成長率は4.3%、リオデジャネイロは4.2%である。
インドは国家の成長率が5%であるのに対して、ニューデリーの成長率は6.4%である。
平均すると世界の大都市は、一人あたりGDPが、国全体のそれよりも80%も高いのだ。
こうしたデータが明らかにしているのは、国家単位の経済システムから、都市単位の経済システムへの移行である。
グローバル化が進んだ結果、国家よりも都市に経済の比重が置かれるようになったのだ。
つまり、国を豊かにするのは、国ではなく、都市なのである。
国家は、都市の成長を促すことが、国全体の成長につながるのだ。
では、都市の成長には何が必要なのだろうか?
多国籍企業の誘致、クリエイティブな環境整備、有能な労働者の誘致などが上げられるだろう。
一番の鍵となるのは、多国籍企業の誘致だ。
多国籍企業は、多くの雇用を生み出し、多くの税収をもたらすからである。
都市が、多国籍企業を誘致するには、格別の魅力を備えていなければならない。
世界には色々な都市があり、競合しているのである。
他の都市よりも優れていなければ、企業にとって魅力的なものに映らないだろう。
そういった意味で、多国籍企業を顧客と見立てて、マーケティングの技術を駆使して呼び込む必要があるのだ。
本書の著者であるフィリップ・コトラーはマーケティングの大家ゆえ、内容からいって、大変説得力のあるものに仕上がっている。
現在繰り広げられている世界の「都市間競争」を知るのには、充分な内容である。
今後、日本でも導入されるであろう経済特区の問題とも絡んでくるので、こうした知識は、得ておいて損はない。