人口問題、異常気象、水・食料問題、エネルギー問題など、人類と地球をめぐる多くの課題を、新書というコンパクトな形でまとめあげた本である。
これらの問題は、人間の経済活動を通じてもたらされたものだ。
人間の経済活動によって、地球は温暖化して異常気象を招く。
異常気象により、水不足の問題が生じる。そして水不足は、食料問題に直結する。
このように、多くの問題がリンクしている。
私がこの本のなかで、最も関心を持って読んだのが、水不足の問題である。
現在、これまでに無いペースで人口が増え続けている。
2015年、世界人口は72億人を超えたが、2060年頃には100億人を突破すると見られている。
こうした人口の増加ペースを、大幅に上回る勢いで、人類の水使用量は増加している。
2030年には、世界で必要とされる水のうち、約40%が不足すると言われている。
水資源を最も多く利用しているのは、農業用水だ。
したがって、水問題は食料問題に直結する。
水不足と食料問題について考える際に、覚えておきたい話がある。
牛肉1キロをつくるためには、11キロの穀物がいる。
そして、11キロの穀物を育てるには、20.6トンもの水を必要とするのだ。
ということは、牛肉を1キロ輸入した場合、それは20.6トンの水を輸入していると言い換えることもできるわけである。
日本の食料自給率は約4割である。
海外から食料を輸入することで、その生産に必要となる水を、自国で使わずに済んでいる。
食料の輸入は、いわば水の輸入を意味している。
つまり、世界の水不足の問題は、日本の食料問題にダイレクトにつながる大問題なのだ。
今後、水をめぐって紛争が起こることも懸念されている。
すでにインダス川において、インドとパキスタンが、リオグランデ川ではアメリカとメキシコが、チグリス・ユーフラテス川ではトルコ、シリア、イラクが紛争を起こしている。
世界中で最も水不足が深刻なのが、中東である。
過去半世紀の国家間の水紛争を調査したところ、37件中、30件が中東地域におけるものである。
人類は、こうした水不足の問題にどのように立ち向っていけば良いのだろうか?
一年を通じてほとんど雨が降らないシンガポールでは、海水・汚水の淡水化事業が盛んにおこなわれている。
これによって、国内で使用する水の約半分を補っているという。
日本もこのような対策をとり、将来の水不足に備えるべきだと思う。
本書は、今、取り上げた水不足の問題をはじめ、人類と地球がかかえる大きな問題を、概説的に理解するのに適した書物であると言えるだろう。