暴走老人・下流老人を生み出す背景とは 『老人に冷たい国・日本 「貧困と社会的孤立」の現実』 河合克義/著

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高齢社会になった日本。
高齢者は、全国に3000万人いる。そのうちで一人暮らしの高齢者は600万人。
そのうちの約半数の300万人が生活保護水準である年間120万円以下の収入で暮らしているという。

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高齢者=富裕層?

高齢者は若者に比べれば、裕福な人が多い。
これが世間一般のイメージであろう。
しかし、裕福な高齢者がいる一方で、貧しい高齢者もいるのだ。
生活保護の不正受給者が社会問題化しているが、その一方で、生活保護水準以下で家計をやりくりする高齢者も多くいる。

暴走老人が続発する背景は

本書は、一人暮らしの高齢者の生活を追うことで、「老人に冷たい国・日本」の実態に迫ったものだ。

高齢者の一人暮らしは、悲惨なものである。健康なうちは良いが、身体が弱ってくると、何をするのも大変である。それに何しろ寂しいだろう。お金があれば、そういった寂しさをまぎらわすこともできるだろうが、概して一人暮らしの高齢者には貧しい人が多いので、経済的な困窮が、さらに高齢者を追い詰めるのである。

また年をとると誰でも頑固で意固地になるものだが、経済的にも人間関係にも貧しい状況におかれていると、それこそやけのやんぱちを地で行くような生き方となって、恥も外聞もなく、暴走老人まっしぐらといった具合になるのかもしれない。

下流老人は、いまの若い世代の未来の姿でもある

若い世代にとっては、他人事のように思えるだろうが、今後一人暮らしの高齢者世帯は、急増していくものと予測されている。
本書で示される一人暮らしの貧困高齢者の姿は、今の若い世代の将来の姿であろう。
今後さらに加速化する高齢社会のなかで、現状の年金制度、社会福祉制度を存続するのが難しいのは、誰が見ても明らかだ。
確実に将来、無年金の高齢者が増え、彼らは路頭に迷うことになる。
将来老人になる今の現役世代は、確実に今の高齢者よりも貧しい暮らしをすることになることは、確実であるからだ。

昨今「下流老人」なる本が出版されているが、老後は年金でばら色というのは、夢の話なのである。

日本の社会保障制度の問題点が、暴走老人・下流老人を生み出す

本書は、一人暮らしの高齢者の生活実態を、性別・年齢・収入・地域など、様々な角度から分析している。
豊富に集められたデータは圧巻であり、新書のレベルを凌駕するものである。

本書を読んで感じたのは、日本の社会福祉政策は、誤っているということである。介護保険制度にしろ生活保護制度にしろ、本来は給付を受けるべきなのに、遠慮して給付を受けない高齢者が多い。

こういった人たちの生活を保障するには、現行の生活保護制度を廃止して、ベーシック・インカムのような全員が平等に給付を受けられる制度に改めるべきだと思った。

老人に冷たい国・日本~「貧困と社会的孤立」の現実~ (光文社新書)
老人に冷たい国・日本 「貧困と社会的孤立」の現実 (光文社新書)

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