目標達成シートという言葉を耳にしたとき、現在は多くの人が北海道日本ハムファイターズの大谷翔平を思い出すはずだ。多くの自己啓発書において、目標や願望を達成するためには、まずそれを書き出すことを進めているが、大谷翔平はまさにそれを地道におこない、かつ日々のトレーニングを重ねていくことで、今日も常人離れした高いパフォーマンスを発揮し続けている。本書の著者もまた、目標を紙に書き出すことで、成功した人物である。
この本の著者もまた、大谷翔平のように二人といない人物である。何と、ホームレス状態から、上場企業の社長になったという経歴の持ち主なのである。本書は、そんな人物による、目標管理の本である。著者その人が歩んできた人生については本書の主たるテーマではないのでここでは触れないが、よくぞ数々の困難にあいながらも、設定した目標から目をそらさずに生きることが可能だったなというのが、その境遇を読んでの率直な感想である。
毎日毎日、あらゆるタイムスパンの目標を紙に書き出していく
なぜ著者は逆境の中にあっても、目標を常に意識し、達成することが出来たのか。その秘密は、1枚のシートにあるという。本書は、そのシートについて述べられている。
定めた目標を見つめ、実際に行動におとし込んでいくための、その具体的なやり方とはどんなものなのか。秘密は、1枚のシートにある。
そのやり方は、いたってシンプルだ。ただただ1枚のシートに向かって、人生を貫くもっとも大きな目標から、年間目標、月間目標、週間目標、その日一日の実行レベルの項目へといたるまで、順々に書き出していくのである。
このやり方について真っ先に感じることは、週間目標程度ならば状況も変化するので毎日紙に書く必要もあるかもしれないが、何故わざわざ来る日も来る日も人生の目標や年間のそれまでをも書かなければならないのだろうか、といったところだと思う。わたしも正直そう思った。だが、徹底的に、毎日毎日、さまざまなレベルの自分の目標、夢、願い、課題を書き出していくという作業には、もちろん深い理由があるのだ。
人間を動かしているのは自律神経である
著者は本書のなかで、人間は自律神経によって突き動かされていることを強調する。自律神経とは、自分の意識が及ぶことのない領域であるにも関わらず、わたしたちの中に確実に存在している領域のことであるが、著者はそんな自律神経を「自律神経さん」と呼びかけることで意識化し、目標実現のために協力してもらおうと提案する。
言葉を用いて、自律神経に働きかける
わたしたちは自律神経そのものに対して、直接その動きに介入することは不可能だが、言葉によって間接的に働きかけることは可能であると、著者は話をすすめていく。ここでいう言葉とは口から発せられる音声レベルのものから、心の中で思う思考としての言葉、さらにはそれらの思考を通して起こされる文字など、言語に関わるそのすべてを含む。
要するに、前述したあらゆるレベルの願望や目標を紙に書き出すという著者のやりかたは、言葉を用いて潜在意識を活用し、かつ目標を書き出すことでそれを可視化し、意識的に目標の確認を徹底していくというやり方になっている。これは、いわば潜在意識と顕在意識のあわせ技であるといえ、目標を常にさらすことでいやがおうにも意識せざるを得ない状況を作り出すのである。そのための方法が、毎日毎日、来る日も来る日も書くレベルの目標を書き出すという行動なのである。
お金もかからず、いまこの瞬間からでもすぐに出来てしまう目標達成法である。ぜひ実践ともしていただきたく思う。