離婚やDV(家庭内暴力)などの家事事件を、これまでに多く扱ってきた弁護士が書いた本である。
表題にあるとおり、夫からすると何の前触れもなく「妻が突然、離婚を切り出す」ケースが多い。
なぜ、離婚は前触れもなく突きつけられるのだろうか?
理由は簡単だ。
「妻が突然、離婚を切り出した」と考える人が多いのは、それに至るまでの妻が発していたサインに、夫が気付いていないからだ。
きちんと、離婚には前触れがあるのである。
つまり、離婚を切り出されても、理由がさっぱり分からないと思っているのなら、やり直すことは難しい。
それだけ、妻との心の溝が相当深まり、認識にずれが生じているからだ。
離婚の原因となるのは、多くの場合DV(家庭内暴力)である。
身体的な暴力は分かりやすいが、精神的暴力というのも、DVに該当する。
妻を殴ったり、蹴飛ばしたりしたのなら、酩酊していなければ、さすがに覚えているだろうから、夫は認識できる。
だが、精神的暴力の場合は、人それぞれの見方によっても変わってくるし、判断に困るものも多いから厄介だ。
例えば、夫婦で何かトラブルがあったときに、意見が一致するまで、話し合いで解決したとする。その場合に、夫は「民主的な話し合いのもとで、合意に達した」と認識しているものが、妻の立場からすると「意見が一致するまで、夜中まで話しあっているうちに、根負けして、夫の意見に従った」と認識しているケースは多い。
本書は、女性の離婚弁護士が、想定読者を男性として書かれたものである。
離婚問題で、著者の元に駆け込むのは女性であるから、妻側の論理で主張が展開されている。したがって、妻側の主張がすべて真実であるかのような誤解を受けてしまうかもしれない。
だが、それで良いと思う。個別の事例において、夫と妻のどちらが正しいかというのを、知っていても、離婚を防ぐ上では何の役にも立たないからである。
本書が優れているのは、離婚を切り出すまでに、妻が示すサインを具体的に示していることだ。
・家事や育児がおろそかになる
・無言・無表情
・いつも夫の意見に従う
・謝るのは、いつも妻
・あらゆることに興味なし、意欲なし
このようなことが妻に当てはまるなら、それは離婚の兆候である。
夫としては、妻が自分に合わせてくれるのは良いことのように思えるし、過ごしやすいと感じるかもしれない。しかし、こうした認識は極めて危険である。
本書を読んで、妻の立場から、自分を眺めてみると、どうだろうか。
仕事に追われて、家庭を顧みる暇もない人ほど、こういった本を読む時間を見つけてほしい。