戦後の日本人は、地域共同体から離れて、会社に従属する生き方を余儀なくされてきた。
地方で学業を終えて社会人になると、大都市に職を求めて、首都圏にマイホームを持ち、核家族で暮らすようになった。
地縁・血縁といった、これまでの日本人が持っていた地域共同体の力が損なわれてきた。
しかし、代わりに、会社自体が家族や共同体のような機能を担ってきたのだった。
会社に所属していることで安心感を持って生きていけるのは、それはそれで幸せなことであった。
しかし、こうした会社単線社会の時代は終わった。
成果主義と新自由主義の導入により、大家族的な会社共同体は崩壊した。
もはや会社は、かつての日本人が失った地縁・血縁の役割を果たすことができなくなったのである。
では、どういった生き方をすればよいのか?
確かに、IT技術の革新により、会社から離れて生きていくことも可能になった。
しかし、誰もが会社から自立して生きていけるわけではない。
こういう生き方をするのには、高い能力を必要とする。
本書は、こういった自立した生き方を奨励するのではなく、会社に身を置きながら、上手に生きていく方策を述べたものだ。
自分は「交換不可能な存在である」という気持ちを持てるようになるのが、私たちの目標である。
人間とは本来、交換不可能な存在である。
世界中探しても自分と同じ人間は、一人もいないのだ。
だが、会社では「お前の代わりはいくらでもいる」と言われて、格付けされて、選別されて、リストラされる。
会社での人間の扱い方を見ると、「人間は交換可能な存在である」と思ってしまう。
これでは、良くないのだ。
自分の存在を受け止めてくれるものを、人間は求めるべきだ。
家族、友達、地域コミュニティなど、そういったものに、自分の存在を認めてもらうことが大事だ。
本書は、具体的にどうすれば、生きていくのが楽になるかヒントを与えてくれるものだと思う。
著者自身が、かつて人生に絶望していた精神的危機を、うまく抜け出した経験が、非常に参考になると思う。
それは、「シャーマニック・カウンセリング」がきっかけだったという。
このような著者の経験談は、私たちが生きていく上で、大きな示唆を与えてくれるものだ。