いつからか、ビジネスの現場でPDCAということが言われるようになり、いまではすっかり定着した。「PDCAを回せ!」という掛け声が、あちこちで聞こえてくるのだ。今日では大学生でも普通に口にするほどまで一般化したものとなったが、だが、いざPDCAとは何かと問われたときに、それをすらすらと説明することは難しい。
要するに、「P」は計画、「D」は実行、「C」はチェック、「A」はアクションといったこと以上の説明が出来るだろうか、ということである。つまり、それぞれのアルファベットが指し示す意味はわかるが、実際にこの概念を使って、どのようなことをやっていけばいいのかという具体的なことを語るとなると、なかなかはっきりしないというのが、ふつうの感覚ではないだろうか。本書は、そのPDCAをマンガで解りやすく説明する作品となっている。
PDCAを回すとは?
物語の舞台は、タオル生産の中小メーカー・山瀬タオルである。主人公、武石ナナを中心にチームの奮闘を描いているのだが、これがよく出来ている。自社が開発・販売するタオルの売り上げが落ちているその事実を前にして、会社が一丸となってその現実に臨み、乗り越えていくのである。
ある日ナナたちは、社長が記したという「PDCA」について書かれたノートを支給される。彼らはことあるごとにそれを読んで、その時々に現在はどのような状況なのかを見きわめ、いま自分が出来る最善のことは何なのかを考え、行動に移していくのだが、これがぐいぐいと読ませる。物語は、さまざまな要因を孕みながら、一気に進んでいくのだ。
この、作中にあらわれるノートの言葉が、実にいいのである。物語を読みながら、思わず胸にしみてくる。ビジネスに逆境はつきものであるが、そのような困難な状況を乗り越えるためにはPDCAの観点が不可欠であるということが、わかりやすく説明されるのだ。
PDCA、それぞれのアルファベットが示す意味を解説
さて、本書にはPDCAについてさまざまなことが述べられているが、ここでは、PDCAの「A」の部分について書いてみたい。
わたしたちは、PDCAの「D」はDO、「A」はACTIONだということはわかっているが、日本語を母語とする者の一般的な感覚すると、DOもACTIONも、そのふたつは同じものを指し示すような感じがしてならない。だが本書では、このふたつを厳密に分けている。
「D」とは「P」の計画を受けて「実行」することであり、「A」とは「D」で実行した結果を受け、それを「C」、つまりチェックというかたちで評価を加えた上で、「改善点を施すために行動を起こすこと」であると説明する。これは、たいへんわかりやすいPDCAの定義
ではないだろうか。
トヨタのカイゼンはPDCAの具体例である
物事は、ともするとやりっぱなしになりがちである。行動力はあるのに一向に成果が上がらない人というのがいるが、彼らは「D」は立派に出来るのだが、それを受けての「C」がまるで抜けているのであろう。そうなると、現状の検証ということをしないがために「A」の改善の実行という視点がまるでなくなってしまう。それゆえ、いつまでたっても結果が出なくて空回り、ということになるのだ。
本書にもあるが、あらゆるすべての仕事の根本は、改善点を見つけることである。トヨタはまさにその精神で動いている企業であるが、カイゼンという言葉が世界共通のビジネス用語になったことからもわかるように、改善の精神こそが、あらゆるビジネスにおける根本にあるべきものなのである。そう、「仕事イコール改善」なのだ。
PDCAを学ぶ最適な本
本稿を結ぶにあたり、本書のマンガ作品としての美点も述べておこう。本作は絵柄もさっぱりしていて見やすく、たいへん好感が持てる。また物語も起承転結がしっかりしていて、読んでいてカタルシスが得られる。ビジネスマンガというと、ただただビジネススキルや概念を説明することに終始して無味乾燥な内容になってしまうものも多いなか、本書はひとつのマンガ作品としても、ある一定以上のものとなっている。臨場感たっぷりに、PDCAとは何かを学べる作品になっているのである。
まんがで身につくPDCA (Business ComicSeries): ―――「その他大勢」から抜け出すために
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