『日本の納税者』 三木義一/著

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税金は、お国に納めるもの。
お国は、納税者を取り締まるもの。
このような意識がはびこる日本は、いまだに封建時代の価値観から逃れられていないのだと、本書は、厳しい批判を加えている。

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日本国憲法には、国民の三大義務なる奇妙なものがある。
「勤労の義務、納税の義務、教育の義務」というやつだ。
こうした義務規定がなぜ盛り込まれたかというと、当時の議員たちが明治憲法との連続で、新憲法を考えていていたことを示している。

国民主権という前提から考えると、自己の財産から税を拠出して、日本国の財源とするのは、所有権の行使である。
義務規定を設けないと、税金を払わない者が続出すると考えたのだろうが、主権在民の考え方からすると、「納税の義務」というのは、日本国憲法に馴染まない性質のものである。
芦部信喜に代表される日本の憲法学者は、こうした事情があったため、憲法における義務規定を、ほとんど無視してきた。

税を払うという行為は、本来は国民の所有権の行使という権利なのである。「税金を払う」ことは国民の権利、という意味合いで、本来は考えるべきである。

実際に諸外国では1980年代以降、納税者の権利が憲章などの形で定められるようになっている。
そう考えると、いかに現在の日本の税制が、わたしたちの権利をないがしろにし、馬鹿にしたものであるのかが、よく分かる。

現在、所得税には「申告納税制度」が採用されている。
戦前までは「賦課課税方式」であり、これはヨーロッパ諸国では多く採用されているものである。
賦課課税方式の場合、税額の計算は税務署の仕事である。
納税者は、その資料を税務署に出せばよい。
納税者の資料としての申告を見て、税務署が計算した上で税額を決定することになる。
これに対し、日本の申告納税制度は、税務署の税額計算の手間と賦課処分の手間を省き、申告書に税額を記載させることで、税務署がすべき仕事を簡略化したものである。
言い換えれば、納税者の協力により課税コストを軽減しているのである。
しかしながら、税務署は納税者に対して、非常に不親切である。

税務署がいかに不親切なのかは、いくらでも例をあげることができる。
税申告に必要になるのは「税法」の知識である。
税法は、法学部の教員でも通常分からない法律である。
そもそも税法はもとより、確定申告の仕方ですら学校で教えてくれないのだから、納税者が困るのは当然である。
それでも、税務署は、納税者に対して「税法を知らない納税者が悪い」というスタンスで物事を判断する。
だから、納税者は一生懸命調べて、申告書をつくらなければならないのだ。

もし、納税者が一生懸命税法を調べた上で、申告した税額について、「少ない」と税務署が判断すれば、過少申告加算税という制裁が加えられることになる。

次に税務調査について見てみよう。
税務調査には、任意調査と強制調査がある。
脱税でもないのにある日突然、店や会社にやってきて、「調査させろ」と言うのである。
しかし、こうしたやり方は、さすがに税金を払う側の反発が強く、また税務調査官としても対応に困るものだった。
そこで、国税庁は1964年に、任意調査については事前通知を励行することを全国の税務署に呼びかけたのであった。
しかしながら、大分や静岡、千種といった税務署では、事前通知無しの任意調査がずっと行なわれていた。

法的に、事前通知が必要とされたのは2009年の民主党政権になってからである。
だが、当初の民主党案では書面による事前通知が盛り込まれていたが、自民党・公明党の反対により、口頭で事前通知すれば良い、ということで落ち着いたのである。
書面の形になってしまうと、それが証拠として残ることを税務署は恐れたからである。
「証拠が残ると困る」というのは、まるで泥棒や詐欺師の発想である。
最も公明正大でなければならない国家機関が、このような発想をするとは、なんとも情けない話である。

先ほどにも述べたが、世界的には、納税者の権利を憲章などの形で、諸外国では明記するようになってきている。
民主党は、納税者権利憲章制定を試みたが、2013年の衆院選敗退により、見送られることになり、現在の政権では議論すらもされていないありさまだ。

日本は、税制も予算の使われ方も極めて不透明な国である。
国民は、税を払うという所有権の行使によって、国家予算の一部を拠出することで、国政に関与するのである。
そうでなければ民主国家として機能しないであろう。
本書がわたしたちの税金に対する意識を高めるべく、一人でも多くの人に読まれることを願う。

日本の納税者〈電子書籍Kindle版もあります〉
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