現在、シングルマザーの数は全国で123万人である。
その多くは、離婚によってシングルマザーとなった人たちだ。
結婚した3組のカップルのうち、1組は離婚するというから、その分、シングルマザーは増えることになる。
もちろん、中には父親が子どもを引き取り、シングルファザーとなるケースもあるが、圧倒的に、母親が子どもを引き取るケースのほうが多い。
子どもが生まれると、夫婦間の愛情は変わるものである。
「はじめの子どもが生まれてからの夫婦の愛情の変化」をデータ化したものを提示してみたい。
妊娠中の女性、0歳の子どもがいる女性、1歳の子どもがいる女性、2歳の子どもがいる女性と、四つのグループに分けて、以下のような質問をしてみた。
「配偶者がいるときに、相手を愛していると実感しますか?」
この質問に対し、YESと回答したのは、妊娠中の女性では、74%という高い数字を示すのに対して、0歳児の母親では、45.5%、1歳児の母親では36.8%、2歳児の母親では34.1%という結果になっている。
この結果を見ると、子どもが生まれて、育児期間に入ると、夫に対する愛情が冷めるということが言える。
子どもが生まれると、平日のうちの大半を母子のみで過ごすことになるのだ。
夫の平均帰宅時間は午後9時ということなので、結果として母子関係が密着になって、夫婦との関係が希薄になってしまうのは、仕方のないことと言える。
本書では、多くの母子家庭を取材しているが、離婚の理由として、男性の労働環境をあげているのが興味深い。
夫がブラック企業に勤めていて、ほとんど家にいなかったことが理由で、結果的に離婚に至ったケースがあげられている。
母子家庭へと至る過程には、男性の長時間労働が影響しているのだ。
育児休業や育児短時間勤務などの制度が整っても、それを使って実際に子育てをするのは、その多くが女性である。
男性は夜遅くまで外で働くという社会通念が、そうさせているのである。
育児休業などの制度は、一般的には女性の権利という文脈で語られることが多いが、実は男性側の権利という文脈で捉える必要があるのではないだろうか。
本書は、こうした問題意識のもとに書かれている。
取材されている母子家庭の置かれている環境は、社会的、経済的にとても厳しいものだ。
貧困児童が6人に1人という現在の日本は、雇用の問題や保育所の問題など、子育てをめぐって実に多くの問題をかかえている。
本書は、新書というコンパクトな形で、広く社会にこのような問題を提起するものである。