今日は、ビジネス書の著者は多くのひとがいるが、いまから20年ほど前の1990年代の著者は、ほんの少しの、限られたひとが執筆をしている世界であった。また、それぞれのひとに領分があって、この分野ならこのひと、といった印象があった。具体的にいうならば、早起きなら税所弘、学者による軽い読み物ならば竹内均、そして、ビジネスマンをとりまく生活そのものに関しては、本書の著者、福島哲司がナンバーワンであった。本書は、手帳をベースに、情報をいかにいかしていくか、というテーマの本である。
情報との正しい付き合い方
本書は、情報とは、発信者によって必ず加工されたものであるということの確認から始まる。メディアは、その受け手が喜ぶような情報を発信する。ポジショントークという言葉があるが、あらゆる言説はポジショントークなのだと言えるだろう。これは、メディアだけではなく、誰にでも当てはまることでもある。あらゆる情報は、疑ってかからねばならないのだ。裏をとったり、なぜそのようなものが流されているのかを、自分の頭で考えなければならないのである。
ポストイットを活用しよう
本書は、ポストイットを活用することで、情報をさばいていくことをすすめる。ポストイットは、どんどん使うのがいい。ケチってはいけない。ポストイット代以上の価値を、それを利用することによって生み出せばいいだけの話である。投入した時間を労力、お金以上のリターンを得ることが出来れば、その仕事は成功であり、逆に出来なければ失敗である。ポストイットや紙をケチって生産性がさがるようならば、こんなに馬鹿はことはない。
課題は具体的な行動レベルで、かつ数字を含んだものを!
著者が述べている予定の立て方のコツについては、この手の本で言われてれていることとだいたい同じである。大枠からかんがえて、それを今日できる行動レベルまで落とし込んでいく。そう訴える。この「行動レベル」というのがポイントだ。具体的に言えば、ただ漠然と「仕事をする」と書くのではなくて、「**の案件の報告書を書く」、というふうに予定を立てるのである。さらに、これに数字を加えれば、なおいいだろう。3枚を15時までに完成させる、というふうに書くのである。数値化できるものはどんどん数字にしたほうがいいい。目に見えることで、実感がわきやすくなるからである。
数字という目に見えるレベルで目標管理をすることの大切さについては、こちらのエッセイでも触れている。
手帳をベースにした目標管理を!
このようなことを踏まえると、もっとも意味がないのが、決意を書くことだろう。よく、小学生のときなどに、「めあて」というのがあったが、このような観点からみると、本当に無意味であるような気がしてくる。そこには、きれいごとしかない。どのようになるのかという具体的な状態、数字に表せるものや明らかな達成感がないと、ひとは成長するための努力をつづけることなど出来ないのである。
古い本であるから、当然ネット関連の記述はない。さらには、最近はすっかり見なくなったシステム手帳の話なども出てくる。だが、本の価値は、その語られていることの本質にある。本書の手帳をベースにした情報のいかし方へのアプローチは、古びることはない。